内容説明
時代を超えて、闇は残る
「社会派推理小説」というジャンルを確立した国民的作家・松本清張。格差、差別といったタブーを恐れずテーマとして取り上げる姿勢、地方から中央を相対化する視線により、その作品には昭和という時代の闇が刻印されている。代表作の数々を「鉄道」と「天皇」に注目して読み解き、歴史の暗部に光をあてる。
第一章 格差社会の正体──『点と線』
第二章 高度経済成長の陰に──『砂の器』
第三章 占領期の謎に挑む──『日本の黒い霧』
第四章 青年将校はなぜ暴走したか──『昭和史発掘』
第五章 見えざる宮中の闇──『神々の乱心』
終 章 「平成史」は発掘されるか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kinkin
116
『点と線』や『砂の器』など多くの推理小説を書いた松本清張。作品の背景にある昭和という時代を著者の体験も織り交ぜながら書かれている。私のなかでは映画の『砂の器』を見たぐらいで本は読み始めて途中でやめたことがある。戦後から昭和30年代にかけての世相や風俗をある程度理解していないと読みづらいのかもしれない。寝台車や食堂車も今はないしなによりスピード感が違う。いまのネット社会に馴染んだ人が松本清張作品を読んだ感想を知りたい。私もどうのこうの言わずに読まなければ・・・・2021/08/12
まーくん
101
政治思想史を専門とし、近現代の天皇・皇室にも詳しい著者が、清張が描く”昭和の時代”を読み解く。「点と線」「砂の器」では弱者や差別される側の悲しみからの視点を、「昭和史発掘」や「神々の乱心」では歴史資料を読み込み、タブーを越えて見えざる宮中の闇に迫る清張の姿を見る。昭和の高度経済成長が終わり、失われた20年、30年とも言われる平成の停滞期に入り、固定されていくような格差社会を清張ならどう描いたろうか?令和へと代が替わり平成史はいかに発掘されるのか?”格差の世襲”や”身の丈に合せて”には異を唱えるに違いない。2019/11/18
あすなろ
78
清張はフィクションで書ききれなかったことはノンフィクションで書いた。なるほどと原氏の清張評価に膝を打った瞬間。大学1.2年に読み耽った清張。僕にも書き尽くせない程の作家であるが、唯一読めていない作品がある。神々の乱心。これは僕が作家の絶筆の作品を読むことが嫌いということもあるが、当時途中迄読んで断念したのは理解出来なかったという点があった。二.二六事件と秩父宮とタブーを恐れず見えぬ物を書く清張。そして自らの見解を書かない清張。神々の乱心に再チャレンジしよう。清張ファンそして読書人に必読と思う一冊。2020/02/11
hatayan
52
昭和史を切り口に松本清張の作品を解説。『昭和史発掘』では2.26事件を紹介。昭和天皇の1歳下の弟の秩父宮は青年将校に同情的だったが昭和天皇の怒りに触れて態度を変節させたのではと推理。代表作『点と線』『砂の器』では、今読むことで当時の日本の交通事情や格差が描き込まれていると再評価。未完の遺作『神々の乱心』では、宮中に古代王朝の宗教の名残りが生き続けており、時の皇后が権力を陰で振るっていたことを指摘。在野の小説家だったからこそタブーを恐れずに社会を告発する作品を送り出せたところに清張の凄さを見いだします。2020/11/25
kawa
43
取り上げられる作品は「点と線」「砂の器」「日本の黒い霧」「昭和史発掘」「「神々の乱心」。図表などが掲載されており本編を読みすすめる助けになりグッドかもしれないが、タイトルが大袈裟なわりには突っ込みが浅い印象(前半の2作)。「昭和史~」と「神々の~」は機会を見て読んでみたい。2020/03/22
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