内容説明
戦乱の世から泰平の世へ。16世紀後半から17世紀前半にかけて、日本社会は激変した。徳川家康が開いた江戸幕府による藩の創出こそが、戦国時代以来の戦乱で荒廃した地域社会を復興させたためである。地方の王者たる戦国大名が、いかにして「国家の官僚」たる藩主へと変貌したのか。本書は家康の参謀・藤堂高虎が辣腕を振るった幕藩国家の誕生過程をたどり、江戸時代の平和の基盤となった藩の歴史的意義を明らかにする。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
76
信長→秀吉→家康という支配体制の変遷があったからこその幕藩体制の確立があるということ、秀吉が私が思っていたよりシステマティックに人心掌握をはかっていたことが見えた。藤堂高虎も名前だけしか知らなかったが、かなりのキーマンだったようだ。面白く感じる。2019/09/17
きいち
34
城好きなので、各地の城郭と城下町が江戸初期にいっせいに建造されたことは知っていた。でも、多くがゼロからの人工都市。大投資である、よくよく考えたら、なぜそこまでして作らないといけなかったのか、そもそもなぜ作れたのか。天下普請の一部を除いて幕府の指示じゃない、経営的な必然性があったはず。国替えもそうだ、なぜ当たり前のように動ける?答えられないそれらの疑問が次々と解けていく。◇土地は預かりモノ。土地は国有前提の北欧のような社会、私有前提はしょせん明治以来の短い歴史。変えられうるのか。◇伝播者・藤堂高虎。すごい。2020/04/25
サケ太
29
前提としての信長や秀吉の方針(戦争による経済政策)については疑問もあったが、藤堂高虎が重用された理由である“人脈”や藤堂藩による“地方創生”の手法が書かれているのが興味深い。国を土地を幕府から預かっているという思想、『預治思想』の構築こそが“藩”という形の前提であるという。軍事政権としての徳川幕府の在り方にも言及されている。東アジア全体を俯瞰しての“泰平”という考え方は面白い。現代おける“地方再生”にも繋げているのも興味深かった。2019/07/31
terve
27
藩とは戦国大名の領地経営の延長戦にあるものと思っていました。藩の創出によって地方領主から国家官僚になっていく様を描き、藩とは何かについて論究した本です。読み応えのある本なのですが、藤堂藩(本書に従います)に主眼を置いているため、これがスタンダードなのかという点に若干の疑問があります。筆者が三重大学に勤務しておられるため、藤堂藩が研究対象だったのでしょう。また、限られた紙幅のため書き切れなかった部分もあろうかと思います。書きぶりは面白いので、是非ともいくつかの藩を取り上げたものを刊行して頂きたく思います。2019/08/19
kk
27
在地領域権力としての戦国大名と、公儀中央権力の統治機構の一端としての藩を対比させ、両者は何が違うか、戦国大名はなぜ藩主に変容したのか、その背景や主な担い手などを、京極高虎の治績を交えながら、実証的に、しかも分かりやすく説き明かす。全一的統治機構としての幕藩体制を支えるイデオロギーとしての「預治思想」に注目。「戦争経済による戦国バブル」とか、よく分からん記述もあるけど、全体として、著者の言いたいことがハッキリと伝わってくる、読み応えのある内容。2019/08/12