内容説明
彼はなぜ絵を描き続けたのか?
〈最後の一撃〉が読者の心を撃ち抜く感動の傑作長編。
北関東の小さな集落で、家々の壁に描かれた、子供の落書きのような奇妙な絵。
決して上手いとは言えないものの、その色彩の鮮やかさと力強さが訴えかけてくる。
そんな絵を描き続ける男、伊苅にノンフィクションライターの「私」は取材を試みるが、寡黙な彼はほとんど何も語ろうとしない。
彼はなぜ絵を描き続けるのか――。
だが周辺を取材するうちに、絵に隠された真実と、孤独な男の半生が次第に明らかになっていく。
〈最後の一撃〉が読者の心を撃ち抜く感動の傑作長編。
解説・末國善己
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
三代目 びあだいまおう
316
タイトルも、文庫裏の内容紹介も、私の興味センサーを微塵も刺激しない。大切な読友さんのレビューが目に飛び込み、それだけが私の興味を刺激した。結論は...大傑作!『誰が何のために壁に絵を描いているのか』という謎は早々に解明し、残る350頁で何を紡ぐのかと心配になる。第二章で描かれる家族の哀しき宿命に私の心は激しく痛んだ。力が抜け、崩れ落ちそうになる。人が己の内に隠そうとする過去の傷や劣等感。壁とはあるいはそれらの象徴なのか。男が壁に絵を描き続ける理由、最後に迎える真相に脳天を貫かれたのは私だけではない‼️🙇2020/09/29
青乃108号
186
なんとも地味なタイトルに意味不明な装丁画。ある田舎に、町中が絵で覆われた不思議な場所がある、とSNSで話題になっているという。田舎町なのに絵のおかげで観光客が増えているらしい。描いているのはたった1人の男。しかも上手い絵ではない、子供の絵かと思われる程の下手くそな絵。町の家の壁やら塀やらに一心に描き続ける。何故男は絵を描き続けるのか。物語は時系列を行き来しながら、男の過去をじっくり語る。決して順風満帆ではなかった、その悲しい過去。そしてついに訪れる、ラストの1ページには心が震えた。しばらく動けなかった。2023/10/31
イアン
138
★★★★★★★★☆☆一人の男の半生を綴った貫井徳郎の長編。町一体の壁という壁に稚拙な絵を描き続ける初老の男・伊苅。その動機や行動原理を探るため、ルポライターの鈴木は伊苅の元を訪れるが――。物語はやがて伊苅の娘・笑里の闘病、妻・梨絵子との出逢い、更には中学時代へと遡っていく。「なぜ男は壁に絵を描き続けるのか」というミステリとしては弱めの〝引き〟だが、読み進めるうちに回収される伏線(梨絵子の母性の欠如など)も多く、構成の巧さが光る。一方で結末に唐突感もあり、描く男・伊苅と描かない男・貫井の対比が印象的だった。2026/06/01
アッシュ姉
98
民家の壁に大胆に描かれた奇妙な絵。子供の落書きのような絵が町中へ広がっている不思議な光景。なぜ彼は絵を描き続けるのか、なぜ人々は彼の絵に惹きつけられるのか。男の半生を紐解いていくことで明かされる。時系列と語り手を変えながら過去へ遡り、思いもよらない着地点へ辿りつく。エピローグを前にぷつんと終わった印象だが、疑問点はすべて氷解したので不満はない。完結と筆をおき倒れこむ作者の姿が浮かぶような終わりだった。静かな力作長篇。2020/04/27
りゅう☆
86
家の壁に稚拙な絵を描き続ける伊苅。町人はなぜ描いてもらうのか?ライター鈴木が伊苅を知る人物から伺うも明らかにならない…んだけど物語は伊苅の人生を追う。故郷に戻って一人で塾講師兼利屋をする伊苅。だが彼には幼き娘がいた。妻との出会いと別れ、美術教師だった母の才能に嫉妬する父。順風満帆でない人生の伊苅の過去を知るたびに不憫に思う。そして社会人時代に出会った友人夫婦との関係。色々なことがあったからこそラスト1行で絵を描き続ける理由に伊苅の心の温かさをみた。こんなミステリーもありなのねと貫井さんの構成力に脱帽です。2022/03/14




