内容説明
≪モーツァルトだからといって、ことごとくが「名曲」というわけではない≫日頃、何となくわかっているつもりでも、よく考えてみると曖昧な点が多い、クラシック界「名曲」の条件。傑作と呼び名の高いあの曲、シンフォニーは、果たして本当に「名曲」なのか。「一度聴いたら忘れられない」曲には、どんな仕掛けがあったのか。時も国も超えて、未来へと愛され続ける、楽曲の力はどこに秘められているのか。ベートーベン研究家として名高い、文豪ロマン・ロラン(1866~1944)、フランスの大批評家クロード・ロスタン(1912~70)、ブルックナー研究の大家ロベルト・ハース(1886~1960)や、作曲家クロード・ドビュッシー(1862~1918)、指揮者フルトヴェングラー(1886~1954)などの楽曲的考察を採取。「第九」「雨だれ」「ニーベルングの指環」など誰もが知る12曲を、創作エピソードや譜面から読み解きます。名著『クラシックの条件』(1982年 中公新書)の復刊。内容紹介ショパンは、情緒に流されて構築の計算を忘れるようなタイプのロマンチストではない。それどころか、計算がまったく表に出ないほどに巧妙な、洗練の極みをいく絶妙のバランス感覚の持ち主なのである。≪雨だれ≫の中間部に認められた「膨張」。この膨張の計算の的確さに気づく時、ショパンの情緒のふくらみが、驚くべき感性の制御のもとにあることが見えてくるのである。――――「≪雨だれ≫の構造」より
目次
プロローグ モーツァルトに「名曲」を求めて
英雄の条件 ―― <雄交響曲>と<英雄の生涯>
名曲が認められるまで―― チャイコフスキーの二大協奏曲
編曲の魅力を捉える ――ドビュッシーとラヴェル
≪雨だれ≫の構造 ――ショパンの省略法について
<指環>の構図 ――ヴァーグナーのライトモチーフとは…
≪トロイメライ≫をめぐって ――情緒か、構造か
改作の意味を探る ――ブルックナーの交響曲をめぐって
三つの未完成交響曲 ――シューベルト-ブルックナー ―マーラー
形式のコンプレックス ――<第九交響曲>を解剖する
エピローグ ――マーラー「復活の歌」
あとがき
学術文庫版解説 岡田暁生(京都大学人文学科研究所教授)
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