内容説明
1996年から98年にかけて、当時の沖縄県知事・大田昌秀と、沖縄に移住した作家・池澤夏樹が数回にわたり対談をおこなった。「平和の礎」を建設し、米軍基地問題に真正面から取り組んだ大田知事は、自身の戦争体験を語り、沖縄の歴史をひもとき、現状を憂い、将来を見据え、対話は多岐にわたった。これはその全記録である。しかし、その後の選挙で大田は敗れ、沖縄は大きな揺り戻しに翻弄された。それから四半世紀近くが過ぎても、沖縄のおかれた状況は変わらず、更に悪化さえしている。当時、日本政府の中にもわずかに残っていた良識は消え、いまや目を覆うばかりの劣化と抑圧が日々進んでいる。それ故にこの対話はまったく古びることなく、逆に時間とともに叡智の光を放ち始めているのだ。沖縄が生んだ希有な文人政治家と、マージナルな場所から日本を見つめ続ける作家が平明な言葉で語り合う。民主主義とは何か。沖縄とは何か。沖縄の問題とは何か。そして、なぜいまだ解決していないのか。沖縄と日本が直面するアクチュアルな課題を理解するのに最適な一冊であり、いまこそ読み直されるべき貴重な言葉の宝庫である。こうした言葉の力なくして真の民主主義は手に入らない。この国の民主化は「沖縄からはじまる」のだ。電子化に際し、2016年におこなわれた最後の対話を特別に収録した。その1年後に大田昌秀は世を去った。
目次
『沖縄からはじまる』電子版の刊行によせて(池澤夏樹)
まえがき・ぼくが大田知事に会ったわけ(池澤夏樹)
第1章 沖縄と私とのかかわり
第2章 沖縄が直面する多様な問題
1・心の問題の原点
2・中国と沖縄との関係
3・フリートレードゾーン(自由貿易地域)制度の導入
4・日本国(ヤマト)は信用できますか
5・日本の中の沖縄の位置
6・沖縄の農業問題
第3章 海上ヘリポートを拒否する理由
第4章 訪米で知った恐るべき基地汚染の実体
あとがき(大田昌秀)
特別収録 「最後の対話」
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