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内容説明
元禄三(一六九〇)年七月、深川冬木町の裏店に住む女衒の新三郎は、仕事の不始末から莫大な借金を背負うことになった。その返済のため、重い足取りで向かった江の島の賭場で、運命的な出逢いを果たす新三郎と壺振りおりゅう。その偶然が、新三郎の人生を大きく変えることになる。二人で新たに人生をやり直すべく、おりゅうが考え出したのは、江島神社の裸弁天を江戸へ持ってきて公開する「出開帳」だった。成功すれば何千両もの拝観料が手に入り、堅気に戻れるのだが……。次から次へと押し寄せる難問、問われる新三郎の器量とおりゅうの知恵。乾坤一擲の大勝負の首尾やいかに。おりゅうに美質を磨かれ、度重なる試練にも鍛えられ、一歩一歩登っていく新三郎。手に汗を握るハプニングの連続に一喜一憂しながら、気がつくと二人と一緒に人生の峠越えをしている気分になる。様子のいい登場人物たちの温かい真心と共に、爽やかな余韻が胸に残る傑作時代小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シュラフ
13
エンタテインメント性たっぷりのお話である。江戸深川の女衒・新三郎は 今は女衒から足を洗い おりゅうと世帯をもつ。過去のいきさつから新三郎・おりゅうは てきやの元締めの四天王と女衒の元締め を連れての久能山参りの先達をすることとなった。この旅 四天王のわがまま放題ぶりに新三郎・おりゅうのふりまわされる様が面白い。また旅先での医師・弦山との出会いも面白い。最後にはやっと久能山に着いて、新三郎・おりゅうが二人の絆を確かめる場面がよい。理屈を抜きにして江戸時代の旅の様子を楽しめる。2014/06/22
Koji Eguchi
12
主人公と旅することになった江戸のてきやの元締四天王。その度量の大きさと話し方だけで相手を圧倒する貫禄。そして素直に詫びた者に対する許容。周りの男が皆ちっぽけに見える。そして主人公の妻、可愛さと色っぽさに加え、繊細な気配りと男を励まし、時には太っ腹を見せる。彼女に廻り合い、男の人生は大きく変わった。袖すり合う縁を大きく活かすのが大きな人という唐の教えを見事に表現した痛快な物語。2013/10/28
Y Hoshi
5
しきたりや作法や仁義など、実際に果たさなければならないときは面倒に感じますが、物語にして読むと折り目正しく美しい様式として楽しめるものですね。2018/05/23
hana吉
5
母オススメの作家さんで初読。この小説だけなのか、他のもなのか...。斬新すぎる構成でビックリしました。出来事の山場を越えたら、スパンっと続きがなくなる。で、次の章でさらりとその出来事は成就しました!とツンデレな対応(笑)とはいえ、とてもスピーディーでハラハラの展開、夫婦の仲睦まじさや知恵の出し合い、親分さんたちの豪気なやり取り...。さらりと読めて、でも満腹になれました!他の本も続けて読んでみます。2015/08/02
のりべぇ
4
山本一力さんらしい作品。その世界に引き込まれます。省くときは、思い切り省くのが良い。世界観の丁寧な説明があるが、しつこくなく心地よい。暫し、その世界を堪能いたしました。日本酒の世界だな~2015/05/03