内容説明
緩和ケアに携わる身でありながら、萩原健一さんの命を奪ったのと同じ希少がんを患った医師、大橋洋平さん。初めて「患者として」実感した苦しみや気付きを朝日新聞に投稿し、大反響を呼んだ。消化液の逆流で一晩中椅子に座って眠ることを余儀なくされる地獄の日々。スプーン1杯しか食べられず、100キロあった体重が40キロ減って愛妻に当たってしまったこと……過酷な闘病と医学書には決して出てこない患者の真実を、得がたいユーモアを交えて明かす書き下ろし手記。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
真香@ゆるゆるペース
118
消化器内科勤務を経て、現在は非常勤のホスピス緩和ケア医として働く著者が、10万人に1人という悪性腫瘍「消化管間質腫瘍(ジスト)」を発症。医者でもあり患者でもある立場から書かれた闘病の様子は、読んでいてお腹が痛くなりそうなリアルな臨場感だけど、お人柄が表れたユーモアに満ちた文で、重さを感じずスラスラ読めた。胃カメラ検査で暴れてしまったり、抜歯が苦手で延期できないか頼んだりと、医者らしからぬエピソードに何だか親近感。還暦前とまだまだお若いですし、これからも患者風を吹かせてしつこくしぶとく生き抜いてほしいです。2020/03/02
おくちゃん🌷柳緑花紅
92
〘癌になってもよりよく生きる〙。ホスピス緩和ケアの領域ではしばしば耳にする言葉だ。しかし【よく】など生きられない。確実に私は弱っているからだ。でも、良かろうが悪かろうが、これからをしぶとく生きていく。全てのがん患者にエールを送りたい。しぶとくいきて!私もそうするから。緩和ケア医の大橋洋平さんの時にユーモアも交えて発病から手術そして再発。時々の心情、家族とのふれ合い。そして緩和ケア医の仕事を続ける。自身が癌になった事でがん患者のリアルな苦しみを教わったと言う。余命が何日かでは無く何日生きたかの足し算。納得。2022/02/04
ニッポニア
36
いい本だなあ。患者の視点を持った医者、これからきっと名医になれる。また、この本を読んでその視点に気づいた医師がいたら、いや、いるだろうから、それがこの本の価値だ。そんな価値を持たせられるような本を目指したい。以下メモ。非常勤で、手当て目当てに臨時当番をする、医療現場の過酷さよ。治療法は自分で選びたい。苦しいのならばいい人にならなくていい。叶うならば半年は生きていたい、この手記をどうしても仕上げたいから。病院では看護師を敵に回してはいけない。2022/08/27
hiro-yo
36
自虐的なタイトルに興味を惹かれ拝読。自分自身この年齢になるまで癌になった家族親族もなく、友人もいないこともあって癌を身近に感じる事が出来なかった。「ここで私はふうっつと息を吐く。それからゆっくりと大きく息を吸って、また吐く。これを何度か繰り返して、もしかしたら、これが人間なのかと思えてきた」「人はいつか死ぬではなく、俺はいつでも死ぬ」2021/10/01
ちっか(*´꒳`*)♪🍎
26
タイトルを見て、お医者さんも病気になる…そうか、なるよなぁと…。知識があるからこそ、現状、予後などが見えてしまう様子に苦しくなりました。辛さを訴える一方で、心の持ち方を変えようと試行錯誤したり、足掻いたり、奥様の愛情に支えられたりと、心を打たれました。病気は怖いし、弱い気持ちになることもあるけど、現実を見て、時に諦めることも受け入れて、ちょっとずつでも前に向かっていく勇気をもらいました。2023/11/26