内容説明
弥生時代いらい水稲を中心に生きてきた単一の民族という日本人像は近世以降の通念にしばられた虚像ではないだろうか。本書は、中世民衆が負っていた年貢・公事の実態とその意味を問い直し、さらに遍歴する職人集団の活動に光を当てることにより、その虚像をくつがえす。日本中世の多様な姿とゆたかな可能性が描き出される。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
61
中世における平民と職人にスポットをあててかなりきめ細かくえがかれています。網野さん得意の分野なのですが、読む人によってはかなり難しいのではないかと感じられます。私も「日本社会の歴史」(岩波新書全3巻)をもう一度先に読んでいたほうがわかりやすい感じがしました。また宮本常一さんの「忘れられた日本人」を読んでみるのもいいのかもしれません。2015/06/17
うえ
4
「非水田的な生産物を年貢とする荘園や公領では必ず…交易が行われていた…これまで中世社会は自給自足的であると考えがちであったのでありますが…この常識はかなり修正しなくてはならないと思います。たとえば、永原慶二、佐々木銀弥両氏はそうした見かたをとっており、日本の中世社会を基本的に自給的な家産的領主経済によって構成されていたとされ、それが通説になっていますが、これに対し、脇田晴子氏は批判的で、中世初期の交易を積極的に評価する立場に立っており、私はこの脇田さんの見かたのほうが、より事実に即している思っています」2017/09/26
スズツキ
3
網野史観とも呼ばれる独自の視点からの中世史の研究。いまさら言うまでもなく名著でしょう。2016/03/23
式
2
平民と職人をテーマに活発な民衆像を拾い上げる本。前者に年貢・公事や交易を、後者に特権・権威や傀儡・唐人を結びつけて解説。公演を元にした分かりやすい文章で著者の歴史観の方向性を記した部分も多い。南北朝で転換をした背景についてここではあまり明らかにされていない。2021/06/30
Minoru Takeuchi
2
中世を二つ(平安末期から鎌倉、南北朝前と南北朝後の戦国、江戸)に分けて、平民、年貢、職人についてのあり方について、教科書に無い面白新しい解釈、見解が説明されています。年貢って米だけじゃない、鉄、絹、綿とか色々なものが割り当てられていた。東国で源氏、西国で天皇が敬われるなど社会システムが違ったことについても熱く記載が有ります。南北朝後文字が普及したため、土着、呪術的、感性の世界感が消失、画一的、理性による世界感と都市が広がる。。。。。なるほど、感激しました。2014/08/22