内容説明
哲学者は激化する時局のなか自らの哲学体系に沈潜し日本について、世界についての思索を深めた。西田哲学の中心概念の一つである「絶対矛盾的自己同一」を駆使し、日本精神や東西文化の問題、そして日本の世界との関わり方を語った一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
109
哲学者で三木清とともに高校時代にはよく読んだものです。とはいっても「善の研究」だけですが。岩波新書から西田先生の講演録が復刻されたので手に取りました。講演録とはいうもののかなり難しく、「他と一との矛盾的自己同一」というキーワードというか概念がよく出てきます。日本の精神を世界とのつながりの中で分析しています。最近の若い人はこのような哲学の本はあまり読まないのでしょうね。2019/07/25
roughfractus02
8
1940年の講義を収めた本書で著者は危機に向かう世界を察知しつつ、一見日本賛美とも思える日本文化の本質を主題とする。東西文化の「結合点」として日本を捉える著者は、日本文化の本質に「皇室・皇道」をあえて据え、この中心を他者に不寛容な主体(超越神)と捉えると西洋の「覇王道」(帝国主義)に陥ると釘を刺す一方、天皇を現人神と見なす日本的考えを念頭に、宗教は絶対的に矛盾する自己同一的なものとして人間自身を試すという自らの哲学を重ねる。本書は、神であり人という日本的中心を東洋的な絶対的矛盾(無)へと重心移動を試みる。2025/01/15