内容説明
埼玉でサラリーマンの夫、大学生の一人息子と暮らしている神崎穂乃果は、群馬の温泉街が故郷であり、実家は両親と妹が切り盛りしている小さな温泉宿だった。ある日、大動脈弁狭窄症で倒れた父はそのまま人工呼吸器をつけて意識不明の寝たきりとなる。パートで働いている穂乃果は父の介護を母と妹に任せるが、入院の期限で父を自宅に引き取るか施設に入れるよう病院から迫られた妹は、経管栄養を止めて父を餓死させる決断をする。妹の暴挙を止めるため実家へ帰った穂乃果だったが、姉妹の間には過去のある出来事に起因する深い確執があった。さらに、穂乃果の夫の母の自宅がゴミだらけの汚部屋になっていることが分かり、それぞれの家族はどのような決断を下すのか。現役ナースが現代の家族の問題に鋭く切り込む、書き下ろし長篇小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
153
作者は現役看護師だと言う。モデルケースがあったのか?その集合体か?『わたしを巻き込まないで。』と帯にある。ふざけるな!と先ずは言っておきたい。(汗)発端は高校時代に遡り、浅はかな妹・小夜子の言動から姉妹の確執が始まるが、親もいただけない。そうこれは家族の在り方でもあるのだ。病に倒れた父親や姑の介護に関して口だけ出す姉・穂乃果には怒りと溜息しか出て来ない。見事なまでのタイトルまんま。何度も途中でリタイアしかけたが、結末を知りたくてページを捲った。何もかも終わったと言う穂乃果のこれからが気になるところだ。2024/09/03
モルク
110
ここまで不快になる主人公って初めてかも。家族経営の小さな旅館を継ぐはずだった主人公は高校の時の過ちによって東京に出て短大を卒業後結婚、今はパートをしている。が、妹への恨みは忘れ難くその復讐のため、妹を結婚もさせず実家の旅館に縛りつけ、ついには父を不本意な人工呼吸器に繋げても面倒を一人でみさせようとする。自分は仕事もあり遠方と見舞いもせず、口出しだけしてかき回す。夫の実家にも…。自分は悪くないと自負、悪いのは全て妹と、その執念だけ。この結末によって彼女が反省し救われることはあるのか。最初から最後までムカムカ2020/11/07
sayuri
102
読んでいる間も読後も気分は最悪。けれど強烈なインパクトがあり語弊はあるが面白かった。タイトルから介護の物語を想像していたけれど根底にあるのは姉妹の確執。ある事情で実家を離れ、埼玉県で夫と息子と三人で暮らす神崎穂乃果。穂乃果より二歳年下の妹・小夜子は群馬にある実家の温泉宿を継いでいる。前半は姉妹の亀裂の原因が知りたくて頁を捲る手が止まらない。真相を知り穂乃果に同情するも、実父までを妹への復讐材料とする穂乃果の執念には空恐ろしさを感じた。たった1度のボタンの掛け違いで人生は大きく変わる。ラスト1頁まで衝撃的。2019/12/09
ごみごみ
55
読友さんからのご紹介本。前評判通り、終始とても嫌な気持ちのまま読了。高校時代に起きたある事件をきっかけに、姉妹の確執が生まれる。確かに辛く忘れ難い出来事だとは思うが、そこからの姉の執念が凄い。妹の不幸を願い、それを確認することを生きがいとする悪魔のような姉。人はここまで醜くなれるのか。恐ろしい。縁を切ったつもりなら、口出ししなきゃいいのに。ラストは・・まぁそうなるよね。この先どうやって生きていくのだろう。2024/10/04
きょん
41
いがみ合うだけの姉妹はなんて虚しく哀しいのだろう。若かりし頃の過ちのために家をでた穂乃果と旅館を継ぐ妹の小夜子。姉妹も公子も言いたい放題。でも手も出さないなら口も出すべきじゃないというのは正論だと思う。介護の苦労と本音がむき出しの、なかなか残酷な本という点では印象に残るかな。2019/12/18