講談社学術文庫<br> 論語物語

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講談社学術文庫
論語物語

  • 著者名:下村湖人【著】
  • 価格 ¥1,265(本体¥1,150)
  • 講談社(2019/10発売)
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  • ISBN:9784061584938

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内容説明

このうえなくわかりやすい言葉で、『論語』のエッセンスを読める!孔子が伝えたかったことは、こんなことだった。『次郎物語』で名高い作家にして教育思想家であった下村湖人が、人生をかけて読んだ『論語』を、そこに残された言葉をもとに、ひとつの物語として書き紡いだ。ページをひらけば、孔子や弟子たちが直接語りかけてくる!【本書より―永杉喜輔「まえがき」】湖人は生涯をかけて『論語』に学んだ。二千年以上も経た『論語』の章句を自由自在に使って、『論語』で養われた自分の思想を物語に構成したものが本書で、『論語』の精神を後世に伝えたい一念が結晶している。孔子と弟子たちが古い衣をぬぎすて、現代に躍り出す。その光景がみずみずしい現代語でたんねんに描かれている。【本書より―「序文」】 論語は「天の書」であると共に「地の書」である。孔子は一生こつこつと地上を歩きながら、天の言葉を語るようになった人である。天の言葉は語ったが、彼には神秘もなければ、奇蹟もなかった。いわば、地の声をもって天の言葉を語った人なのである。 彼の門人達も、彼にならって天の言葉を語ろうとした。しかし彼等の多くは結局地の言葉しか語ることが出来なかった。中には天の響を以て地の言葉を語ろうとする虚偽をすら敢てする者があった。そこに彼等の弱さがある。そしてこの弱さは、人間が共通に持つ弱さである。吾々は孔子の天の言葉によって教えられると共に、彼等の地の言葉によって反省させられるところが非常に多い。 こうした論語の中の言葉を、読過の際の感激にまかせて、それぞれに小さな物語に仕立てて見たいというのが本書の意図である。無論、孔子の天の言葉の持つ意味を、誤りなく伝えることは、地臭の強い私にとっては不可能である。しかし、門人達の言葉を掘りかえして、そこに私自身の弱さや醜さを見出すことは、必ずしも不可能ではなかろうと思う。 この物語において、孔子の門人達は二千数百年前の中国人としてよりも、吾々の周囲にざらに見出しうる普通の人間として描かれている。そのために、史上の人物としての彼等の性格は、ひどく歪められ、傷つけられていることであろう。この点、私は過去の求道者達に対して、深く深くおわびをしなければならない。 しかし、論語が歴史でなくて、心の書であり、人類の胸に、時処を超越して生かさるべきものであるならば、吾々が、それを現代人の意識を以て読み、現代人の心理を以て解剖し、そして吾々自身の姿をその中に見出そうと努めることは、必ずしも論語そのものに対する冒涜ではなかろうと信ずる。

目次

1 序文
2 富める子貢
3 瑚れん
4 伯牛疾(はくぎゅうやまい)あり
5 志をいう
6 子路の舌
7 自らを限る者
8 宰予(さいよ)の昼寝
9 觚、觚ならず
10 申とうの欲
11 大廟に入りて
12 豚を贈られた孔子
13 孝を問う
14 楽長と孔子の目
15 犂牛(りぎゅう)の子
16 異聞を探る
17 天の木鐸(ぼくたく)
18 磬を撃つ孔子
19 竈(そう)に媚びよ
20 匡の変
21 司馬牛の悩み
22 孔子と葉公(しょうこう)
23 渡し場
24 陳蔡の野
25 病める孔子と子路
26 一以(いつも)って貫く
27 行蔵の弁
28 永遠に流るるもの
29 泰山に立ちて
30 人生の案内者 下村湖人

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

125
『論語』の内容を作者が小説化したもの。孔子と弟子たちのやり取りを通して、人間がより良く生きるために最も必要なことは何かということが論じられる。瑞々しい文体に心が洗われ、人間的な温かみにあふれていて、これまで読んだ日本人作家による小説の中で最も好きな一冊。弟子たちの中には子路のように自己顕示欲の強い人物もいる。当然孔子に叱れるのだが、その叱り方は愛情に基づくもので、子路もそれに気付く。孔子は愛の人でもあった。隠棲しないで、普通の人たち共に苦しみ続けたいという孔子の言葉に、体が震えるぐらいの感動を覚えた。2018/05/26

future4227

75
なんとなくわかったようなわからないような…。私利私欲を捨て、何事にも動じず、なすべきことをコツコツ実行することが大切ってことかな。弟子たちが事あるごとに孔子に説教をくらっている中で、様々な含蓄のある言葉が吐き出されるいわば説教集。その度に弟子たちがヘコんでいるのがなんとも微笑ましい。漢文の和訳的な文章ではなく、下村湖人なりの解釈と文体で口語体のショートストーリー仕立てになっているので読みやすい。身内の悪事をバラすのと隠すのとではどちらが正直な人間なのか、という葉公との議論で孔子の考えはちょっと意外だった。2021/04/11

Kawai Hideki

55
とある勉強会にて、「論語を読み始めたがよくわからん」とつぶやいたところご紹介いただいた。下村湖人が論語の中から数話ずつピックアップして再構成し、孔子と弟子たちが、不遇を囲い弱い心に負けそうになりつつも、真理を極めんと日々切磋琢磨する様子を活き活きと描いた本。「なんでこんな話がわざわざ論語に書かれているのか」という疑問に、それはこういう意味があったのだ、と優しく噛み砕いてくれる。「道を道として楽しむ」のはフロー体験と通ずるなあと思ったり、孔子の音楽論は人生論でもあったのか、という発見があった。ご紹介に感謝。2014/03/24

うえぽん

42
下村湖人による昭和13年の作品。論語そのものの注釈ではなく、その言葉から個々の物語に仕立て直したもの。10頁ほどの各章が、まるでショート動画を観ているような気にさせる展開。行間を言葉豊かに埋める技術によって、逐語訳よりよほど読み易い。心に響いた言葉の中に「剛いというのは、人に克つことではなくて、己に克つことじゃ」「君らがわしに学ぼうとするなら、わしの生活を見ればいい」「自分は自分の言葉を、残らず実践によって証明してきたのだ」がある。AI時代の今、言葉は人のものであるかも自明でないが、行動を偽るのは難しい。2024/03/15

けやき

35
「論語」の思想と孔子の生涯を物語風に書いたもの。面白く読んだ。2024/07/11

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