内容説明
なんで私がスポーツを!?
中年たちは皆、運動を始める。人気作家・角田光代が、フルマラソン、登山、ボルダリング――様々なスポーツに果敢に挑戦した、爽快エッセイ。
おそらく私はこのまま中年ど真ん中になっても、20代のような手痛い失恋をして、10代の娘のように傷つくだろう、一方で、体はどんどん衰えていくのだろう。
年齢と精神と肉体はどんどんアンバランスになっていくだろう。
30数年間、一度も積極的にやったことのない運動をはじめたのは、この予感がきっかけである。
(まえがきより)
運動が得意、好きな人だけが運動をするのではない。だけど、嫌いだと自覚しているからこそ、続けられることもある。健康維持のためというわけでもない。たまに山登りで「ハイ」になったり、ワイン飲みマラソンで「酔狂」を体験したり……。志の低いユルい楽しみ方こそ、中年体育の特権ではなかろうか。
笑い転げながら読んでいると、不意に襲う感動。インドア作家の挑戦に勇気づけられる、傑作エッセイ集。
※この電子書籍は2016年10月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のぶ
87
運動嫌いを自認していた角田さんが、40歳を過ぎて様々な運動にチャレンジしていった記録をエッセイにしたもの。角田さんが永年ボクシングのジムに通っていたのは知っていたが、これだけ体を動かしているのを初めて知って興味深かった。特に内容の中心になっていたのが、各地で参加したマラソン。インドア作家が軽いジョギングを始めたのをきっかけに、43歳でフルマラソンに挑戦し完走する。その後もいくつもの大会に参加し、目覚めていく過程が面白かった。この本が出されて年数が経っているので現在の角田さんがどうなっているのか知りたい。2019/11/13
あすなろ
71
書店平積から購入し、爽やかに読了。運動嫌いの失礼ながら中年の角田氏。何が彼女を押しているのか?僕もウォーキングが好き。もう20年くらいのキャリア。角田氏曰く、己の闘争心と闘っている。そして、好きか嫌いかで言えば嫌いなのである。山あり谷ありである。しかし、ロッテルダムマラソンや鎌倉レストラン、旅先でランニングの章あたりの爽やかな章で同じくその爽やかさを体感することが出来た。前に進む為に、己と対峙して闘い、打ち合わせする為に中年の適度な運動タイムはあるのではないだろうか?そんな気持ちになったのである。2019/10/22
penguin-blue
41
なんだかんだ言って、角田さんは走るのも、動くのも、挑戦するのも好きで、それなりの才能もお持ちだと思うのである。運動音痴を自認しつつ、何かやらなければ…とほぼ何もしないで悶々とする私とは違う。それでも、「走った後の飲み会のために」チームに入ったり、那覇マラソンを走る前からゴールの屋台村で思う存分飲み食いすることを心に決めたり、共感できそうなゆるさを見せてくれるから何となく自分も始められそうな錯覚をしてしまうじゃないか。たとえば村上春樹氏あたりの走る話はストイックな感じで自分に置き換えて考えられないのに。2020/01/07
あつこんぐ
36
先日、ウン10年ぶりに縄跳びをしてみたらなんと!!1回しか跳べず我が身の老化を思い知りました。そんな私は43歳。この年でフルマラソン走れと言われたら1キロも走れず棄権すると思われます。角田さん、凄い。でも、那覇マラソンは楽しそうなので参加してみたいです。1人だと絶対運動しないので、家族みんなで何か出来たらいいのですが。ラン仲間がいて羨ましいです。私もウォーキングから始めようかな。2020/06/06
ぐっち
33
失礼ながら長い間、角田光代さんはこっち側(運動苦手)と思い込んでいた。本を読み、お酒を飲み、猫をなでる完全インドア派だと。どれどれどんな酷い目にあっているのだろうと思いながら読んでみたら、週末には毎週10kmの自主練、フルマラソンにもたびたび出場、そしてトレイルラン!ぎゃー、完全に向こう側(運動得意)じゃないですか!しかし、弱音を吐きながらの描写は、学生時代ですら3km以上走ったことのない自分にもできそうな気になってしまう。特に那覇マラソンやメドック序盤の角田さんがスルーした補食が気になって仕方ない。2019/10/26