内容説明
盛りの誕生
女の子の目はなぜ異常なほど大きいのか?
ルーズソックス、日焼けした肌に茶髪、ヤマンバ、デカ目、インスタ映え……。
日本の女の子たちは、自らのビジュアルを「盛る」ことで特殊なコミュニケーションを行ってきた。それは、デジタルテクノロジーの発展と共に、リアル空間からプリクラやSNSといったバーチャル空間にまで広がりを見せている。この「盛り」とは、いつから行われ、どのように生まれたのか。
「女の子が現実とは違うビジュアルを作り、新しいメディアで公開する技術」を「シンデレラテクノロジー」と名付けた研究者が、いまや世界へその影響を波及させている日本発の文化=「盛り」の全貌を解き明かす!!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はっせー
57
ヤバい。今年読んだ本の中で一番知的好奇心をくすぐられた本であった!皆さんは写真を撮るとき盛ったことはあるだろうか。私はある。おそらく。日本における「盛り」の文化を研究者している著者による「盛り」が誕生した歴史をまとめたのが本書になっている。キーワードは「守破離」。これは日本女性の美意識を表したものになる。流行りの「盛り」の型を覚える。型を覚えたら個性を出す。そして新しい型を作り出す。これが「守破離」の美意識とのこと。面白い!2024/07/08
なるみ(旧Narumi)
28
1990年代からの茶髪からヤマンバ、プリクラの変遷、自撮り、SNSとタイトルにあるように「盛り」を研究テーマに選んだ著者による渾身の一冊。日本人の美意識を解明したいとの思いから研究対象を伝統文化から現代文化へ移して本書を著したとのこと。厚さ3cm程の一冊でしたが、思いの外読みやすかったです。2019/10/16
サアベドラ
24
プリクラから写メを経てインスタグラムに至るまで、日本の若い女性の自撮りと画像加工(「盛り」)のトレンドの変遷と、そこに潜む彼女たちの美意識をインタビューなどから分析した本。2019年刊。著者の専門はメディア環境学で、表紙の女性は「盛った」著者(裏表紙見返しに盛る前の近影あり)。コギャル、ヤマンバ、目デカ、オルチャンなどといった流行は、各時代の技術や状況に依りつつ、「一定の型を守った上で、細部に個性を見せる」という点で共通しているとする。著者の分析がどこまで妥当かはわからないが、おもしろく読めた。2019/07/26
katoyann
22
女の子が顔をメイクやデジタル画像処理技術によって加工する現象について、インタビュー調査や写真の工学的な分析など複数の研究手法を用いて解明を試みた研究書。「盛り」は型を守る日本の伝統文化を汲みながら、若い女の子が所属するコミュニティにおいて、相対的に憧れの対象とされるような顔の加工とまとめることができる。歴史的には90年代のコギャル文化から現代の韓流ブームまで網羅されていて、大変興味深い。「デカ目」加工から「ナチュラル」加工への変化は、デジタル技術の進歩と関係があるという考察であり、読み応えがあった。2024/02/28
小鈴
22
同時代を生きる者として、あの時代の渋谷の少女達がどのように語られ、消費されていったのかよく知っているだけに感慨深い本だ。彼女たちが就職するまでの、22才くらいまでの短い間に込めた「盛り」。それは今の少女達も継承している。彼女たちの文化を批判的にではなく、その文化とそれを支えたテクノロジーの関係性をみごとに解き明かしたのだ。「少女」を分析するには、まずこの本を読まなければ始まらない。そういう凄さがある本だ。2019/06/05