内容説明
浅草花川戸の乾物問屋の一人娘・お春。
美しい母は度重なる浮気の末、父とは別の男の胤を宿し、流産で死んだ。
懶惰な母親を嫌悪し、北国屋の家から解放されたいと願うお春だったが、
ある夜部屋に忍び込んできた番頭の伝九郎に体を許してしまい――。
「夢のような愚かさを書いてみたい」
橋本治が『刺青』にはじまる谷崎潤一郎文学をオマージュした、愚かしく妖しい少女の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アンベラー
11
谷崎潤一郎は読んでないので比較にはならないけどお春を本当に思いやる人間が最後に現れてこの場面のために話は続いてたのかと思った2022/01/20
陽ちゃん
6
美しく、ちやほやされるお春ですが、父にも亡き母にも、そしてずっと側にいる乳母のお米にも正面から向かい合ってもらったことはなかったのでしょうね。登場人物がそれぞれ自分の思いだけで動いているような気がします。なので、ラストでお春の婿養子となった孫三郎がお春を気遣う様子に救われました。2020/02/28
Panja Morimoto
3
橋本治の手による世話物歌舞伎のような展開で一気に読んだ。2022/03/27
Nana Gotoh
1
登場人物が皆、愚かだったり凡庸だったり救いがない中、最後の最後に、男として最も尊い行動をする人間が現れ、救われました。2019/09/18
phlooi
0
大店のお嬢様お春が拐かされた先での白昼夢のような日々。。。お春を始め亡き母、父、乳母、番頭、等々の登場人物たちの身勝手さが面白かった。唯一愛のある婿の孫三郎には、お春じゃなくても「お前さん!」って言っちゃう。2023/11/10