内容説明
オスマン帝国は1299年頃、イスラム世界の辺境であるアナトリア北西部に誕生した。アジア・アフリカ・ヨーロッパの三大陸に跨がる広大な版図を築いた帝国は、イスラムの盟主として君臨する。その後、多民族・多宗教の共生を実現させ、1922年まで命脈を保った。王朝の黎明から、玉座を巡る王子達の争い、ヨーロッパへの進撃、近代化の苦闘など、滅亡までの600年の軌跡を描き、空前の大帝国の内幕に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
63
「トルコ至宝展」で最も印象に残ったのはチューリップでした。トプカプ宮殿もまるでチューリップの館。最近見直されつつあるオスマン帝国の通史。江戸・平安時代を凌ぐ600年間もイスラム・キリスト教が交わる地で維持してきた秘密は、イェ二チェリ軍団を中心とした軍事力とオスマン家の柔軟な権力構造の変容、国家の中枢への奴隷の活用であった。悪名高い「兄弟殺し」や世の男性が夢見るハーレムも帝国の維持に欠かせない慣習。今のアラブの混乱もオスマン帝国が今に至ればなかったのではとチラリと想像させられる。今まで知らなかった歴史でした2019/05/30
kk
61
時間的にも空間的にも広大この上ない帝国の歩みを、よくも一冊の新書にまとめ上げたもんだ。時代毎の記述に明白な過不足もないし、政治・経済・社会・外交・文化・宗教などへの目配りも良い案配。近来稀に見るよーな手際とバランスの良さに感心。また著者の「本書の執筆中、かつての自分に向かって書いているような奇妙な感覚を、幾度か味わった」という述懐、滋味掬すべきものを感じます。文章も整っていて、基本的には読み易い本ですが、とは言え、その情報量は見かけ以上にヘビー。オスマン通になるには、やっぱ繰り返して読まんといかんかな。2019/05/12
まえぞう
54
かつてはオスマントルコと称された帝国の長い歴史が概観できます。ヨーロッパの国々が民族国家として確立、拡張していくなかで、否応なしにトルコを意識せざるをえなくなった帝国ですが、もし柔らかな塊としての実体が、帝国から共和国へと変じていたらどんな国ができたんだろうかと思いました。2019/03/23
skunk_c
51
オスマンの歴代皇帝をもれなく取り上げ、その個性や行いを詳述。この「皇帝歴伝」を軸にオスマンの歴史が語られる。したがって社会史的な要素は薄くなるが、流れや見通しを立てるのには良いか。さらにその時代ごとの大宰相などの有力政治アクターについても系歴を含め記述があるが、そこから見えてくるのはオスマン帝国の本体はアナトリアではなくバルカンだったのではないかとの印象。イスタンブルに首都を移してからはその傾向が強い。だからこそ多民族の帝国が崩壊したあと、現トルコはアナトリアを拠点にして「民族国家」となったのだろう。2019/06/22
るぴん
47
オスマン帝国の600年史。これほど巨大な国の王朝が、途絶えたり傍系に移ることなく、直系のまま600年存続していたのに驚く。後の争いの種を取り除くための兄弟殺しや鳥籠制度が合法化されていたのにもびっくり。イスラム国家だけれど、ハレムの妃達や臣下、国民に対して改宗を強いることはしなかったようだし、かなり国際的で自由な国だったようだ。歴代皇帝の実母はほとんどが奴隷だったからこそ、他の王朝のように外戚による独裁がなかったのも、帝国維持の大きな要因だろうな。最後まで興味深く読めた。2019/07/17
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