内容説明
幼くして生母と離別し、母への思慕と追憶は、作家・丹羽文雄の原点ともなった。処女作「秋」から出世作「鮎」、後年の「妻」に至る、丹羽文学の核となる作品群。時に肉親の熱いまなざしで、時に非情な冷徹さで眺める作家の<眼>は、人間の煩悩を鮮烈に浮かび上がらせる。執拗に描かれる生母への愛憎、老残の母への醜悪感……。思慕と愛憎と非情な<眼>による、「贅肉」「母の日」「うなずく」「悔いの色」ほか10篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
AR読書記録
4
「老親文学」(老いた親をテーマにした文学、と勝手に定義)第一弾として読んでみる。が、老いる前の母を描いた前半の何編かの方がぐっと重い。娘(母ね)の夫を寝取る実母とか(in 寺。夫=坊主)、なんつう因業な家や... しかし、全10編収められている中の8編までが母(9編目は妻)を描き、最後の10編目、物書きになってから50年を経て、不意に父が父として描かれる対象になる、著者の意識に登場するというのは、なにか、母と息子よりもそちらの方がより深く考察すべき事柄のような気がしてくるな。2016/04/01
織沢
2
『鮎』や『贅肉』が特にそうなのだが、登場する母親が容姿は幼女の女性、俗に言う「ロリババァ」に見えて仕様がなかった。 それほど愛嬌のある母親が描かれるということだが、庇護者と母、そして主人公の三角関係がインモラルな崩壊をすることなく持続していく姿は美しいような恐ろしいような印象だった。 『ロリな母さんが再婚してくれない!』みたいな漫画を丹羽文雄原作で誰か書いてみて欲しい。2020/01/23
のえみ
1
母と息子の業。これ、モデルになってるほんとの母が読んだら怒るよ。親不孝小説。2016/07/04
ひかる
1
面白かった。2009/12/11
石川さん
1
ふう。やっと読み終わった。奔放で作者が幼いころに役者狂いになって追い出された母への思慕を中心に書かれた短編集。内容は赤裸々だが筆致は冷静で文学してる感じ(すごい感想!)ですが、似た話が何作も続くので(そういう編集なんでしょうけど)食傷気味にならざるを得ない!親戚や妻の老いなど、できればふだんは目を背けたいテーマが多かったのもつらかった。いずれにしても作者に落ち度はないけども。2012/07/27