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内容説明
痴漢は犯罪であり、同時にその一部は「性的依存症」という病気でもある。東京都心のとある精神科クリニックで開かれる、通称「痴漢外来」。ここでは性的依存症の「治療」プログラムによって、通常30%台と言われる痴漢の再犯率を3%にまで抑えている。痴漢行為を行うのは、どんな人なのか。彼らに共通する「認知のゆがみ」とはなにか。どうすれば痴漢をやめさせることができるのか。最新の研究成果に基づき、痴漢をはじめとする性犯罪・性的問題行動の実態に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆいまある
84
性犯罪を罰するだけでは再犯は減らない。依存症として治療することによって再犯を減らす外来が、日本で唯一池袋の榎本クリニックで行われている。のみならず、セックス依存のグループワークや、性犯罪被害者支援への取り組みも熱く語られる。何よりフロイトの呪縛から逃れ、精神医学もエビデンスベースの科学になるべきであるとの主張は耳は痛いものの(私の外来なんて半分占いかもな。確かに)的を得ている。但しこれ、生活保護受給者囲いこみでお馴染みのEクリだからできる事ではとの考えも浮かぶ。今後行政との連携が欲しいところ。勉強になった2020/02/22
おさむ
34
痴漢をはじめとする性的問題行動はビョーキ、それも一種の依存症であり、刑罰だけでなく、治療が不可欠。それが厳罰化よりも再犯防止につながると、都内の駅前に「痴漢外来」を開いている著者は主張する。学術的に言えば、痴漢は窃触障害なんだとか。禁煙や禁酒、薬物依存などと同じように当事者たちの自助グループもあるとは知らなかったです。うーむ、ビョーキのせいにすれば責任を逃れられる側面もあり、なかなかすんなりと理解は出来ませんが、一筋縄ではいかない重い課題ですね。2019/11/13
みなみ
28
痴漢をはじめとする性犯罪の加害者の一部は、性的依存症であることに着目し、性的問題行動や治療の実態について紹介する新書。性犯罪への認知行動療法の効果について、日本ではあまり研究されていないが、筆者の研究グループの研究結果が紹介されており興味深かった。認知行動療法を受けるグループと性的問題行動の対策に関する自由討議するグループに分けた場合、1年間の再犯の有無を調べたところ、どちらのグループも再犯率は2.9%と非常に小さいとのこと。治療と再犯防止の因果関係はなかなか証明しにくいんだな。2022/06/05
小鈴
24
タイトルはセンセーショナルで下世話な関心を呼び寄せるでしょうが、メインは副題にあるように「性犯罪と闘う科学」とあり、最新の知見を盛り込んで性犯罪の現状、性的依存症とは何か、その治療法(リスク度に応じた治療法)、治療の効果と犯罪の抑止力などエビデンスをもとにまとめています。事例は少なめでお堅い内容ですが、従来よく行われた精神分析や専門家の面談の限界を知ることができてためになります。やめたくてもやめられないあなたこそ読んで欲しい一冊。ぜひ治療に結びついてほしい。 2019/10/27
リキヨシオ
19
「痴漢外来」に訪れる患者の多くは「やめたい、やめなくてはならない」と思いながらも、自力ではどうにもできず痴漢を繰り返してきた。性犯罪に関しては、本人の反省を訴えかけるだけの処罰だけでは効果はなく、徹底した治療も必要になってくる。性犯罪は依存症でもある…と認識しないと性犯罪自体が減らないのではと感じた。性犯罪が減らない背景には、日本に根強く残る男性優位社会にもあり、「法における男性中心主義」に問題があるという。ほとんどの被害者が泣き寝入りしている現実を考えないといけないと思った。2019/12/11