内容説明
日本人と温泉の関わりは古く、三古湯と称される道後・有馬・白浜温泉は『日本書紀』にも出てくる。中世には箱根・熱海・草津・別府などの名湯が歴史の表舞台に現れた。武田信玄ら戦国大名が直轄した領国内の温泉地は「隠し湯」として知られる。江戸時代に入ると大名や藩士、幕臣らはこぞって湯治旅を楽しむようになり、旅行案内書や温泉番付が登場。初の秘湯ブームも到来した――。多彩なエピソードでつづる通史。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鉄之助
276
3世紀の「魏志倭人伝」から、日本の温泉史を豊富な文献に裏付けを取ってまとめている、通史として面白かった。家康が推奨し将軍御用達となった熱海。大名らは、「湯治願い」を出して競って入湯。これが江戸時代の温泉文化が花開くひとつのきっかけになった、とも。薩摩の島津光久、仙台の伊達忠宗も、はたまた本州北端の津軽信義までが入った記録が残っていた。2023/12/11
HMax
34
古代、奈良・平安、戦国、江戸、現代、時代時代の温泉の楽しみ方。古代は湯の神様、奈良・平安はお坊様が奇跡で発見、戦国は兵士の癒し、平和な江戸時代は温泉大ブーム。210年前に書かれた「旅行用心集」にはなんと292カ所の温泉が紹介されているそう。現代はというと、動力がないと噴出しない温泉が7割を占める、ここ掘れワンワン状態。バブルが終わって30年、ゆっくりと楽しめるよう、持ち味の分かる源泉と、大浴場や露天風呂が衛生安全に楽しめる循環ろ過にするとよいと提案。温泉津温泉に行ってみたい。2020/06/05
鯖
23
縄文土器が発掘された地層から湯垢がいっぱいついた岩石が見つかったから温泉に入ってたんじゃないの??から始まる温泉の日本史。古事記の時代から病をいやすところから、戦国武将の隠し湯や戦時中の温泉療養のように、権力者が己の軍隊の怪我をいやし、次の戦いに挑むための場所としての側面も持つようになる流れが切ない。箱根の軍事病院もポツダム宣言が出された後、9月には動けるものは全て逃げ、重病者が横たわってるだけになったとか。平和にのんびり湯につかれる今が一番いいよなあ。2018/08/29
サケ太
19
『温泉』というものを古代から、現代に至るまでを書いた通史。温泉信仰から、神々や偉人たちと結びつけられた温泉。近代に近づくにつれ、その効能が分析されていく。リハビリ施設としての温泉の役割。温泉とともに蘇る地域。平安時代から“宅配温泉”なるものが存在するとは驚き。草津温泉や熱海温泉など、行ったこともある温泉の始まりについて知れたのは非常に面白かった。まさか《隠し湯》が統治手段の一つになるとは。混浴や裸入浴の成り立ち。《伝統》の真実。歴史に寄り添ってきた温泉。これからも色んな温泉地に行きたいと感じた。2020/05/09
そうたそ
17
★★★☆☆ 温泉そのものを紹介する本は数あれど、温泉の歴史を紹介している本はほとんどないのではないだろうか。温泉ファンなら必読の一冊ともいえる。総じて淡々とし過ぎている語り口はやや退屈で面白みに欠けるが、温泉ファンならその歴史のあれこれには新鮮な発見が満ち溢れているはず。2020/01/19