内容説明
なぜ美しいものを作ろうとも思っていない名もなき工人が、時として驚くべき美を生み出すのか。その理由を解き明かそうとした柳は、『無量寿経』にある「すべてが美しい世界をつくる」という阿弥陀仏の誓いに出会い、はたと気づく。ものの美しさは、この宗教的救済によってもたらされていたのだと。そして、美しいもの=救われたものを日本民藝館に陳列し、人もものも、すべてが救われる「浄土」が現に存在することを、人々に伝えようとした。阿弥陀仏の本願と美を結びつけ、仏教の再構築を構想した柳宗悦。この稀有な思想家の核心に迫った著者初期の代表作を、増補して文庫化。
目次
第1章 形から心へ
第2章 永遠の今を求めて
第3章 美への展開
第4章 美の宗教
第5章 “世俗化”のなかで
補章 「美の菩薩」をめぐって
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ryohjin
5
著者曰く柳宗悦の『宗教論が美の世界に展開されていく過程に焦点を合わせて執筆』された本です。伝統を積み重ねてきた工芸のなかに美を見いだし、仏教の光をあてて民芸の思想につなげていく過程を、興味深く読みました。柳宗悦自身の文章を読んで、この世界にさらに分けいってみたいと思いました。2022/04/11
ara
2
民芸がなぜ美しいのか。 民芸の定義は用途があり、流れ作業で作られた大量生産されている雑器である。 そもそも民芸を少しも美しいと思ったことのない私には共感しかねるが、宗悦は浄土真宗の「他力」からその答えを見出す。 浄土真宗はどんな悪人であっても「南無阿弥陀仏」と唱えれば極楽浄土に行けると説く仏教であるが、その阿弥陀仏の力を「他力」と定義している。 この「他力」こそが何者でもない民芸を、一流の芸術家が創作した美術品を凌駕する美を持ち合わせるに至る根本なのである。 しかし、駒場にある民芸館には一度行ってみたい。2024/06/22
なをみん
1
長らく気になっていた本。「阿弥陀の本願が民芸美となっているのだ。」といきなり言われても疑問符だらけだったけど「伝統に他力を感じる」と言われるとそんな気もするけれど、「健康の美」、「尋常の美」と言われると、ちょっと自信がないけれど、「分別心への執着を克服」とか「阿弥陀仏の本願を信じることによって生まれる新しい自覚、覚醒の力、精神の自由」と言われると、なんだかわかる気もします。2024/10/27
緑虫
1
★★★☆ 民芸の思想を柳宗悦の宗教哲学者という側面を踏まえて論じる。美の宗教(人間にとって宗教的感動は必要なものである。しかしながら、現代は形のないものは信奉されない。ならば、美術品を信奉対象とすべし)、悪人正機(善人なほもて往生をとぐ、いはんや悪人をや)と民芸思想の相同など。2022/11/30
S
0
柳宗悦に興味があって手に取ったが、(最後にも書いてあるが)その伝記や仕事の解説ではなく、思想や活動の背景にある宗教思想(浄土宗)を見てとり、その視点から柳宗悦を捉える(むしろ、近現代における宗教論がテーマである)。深く考察されていて面白い部分もあるが、柳宗悦の仕事の前提知識が足りていないので、評価はできず。2020/09/06
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