内容説明
廉太郎の頭のなかには、いつも鳴り響いている音があった――
最愛の姉の死、厳格な父との対立、東京音楽学校での厳しい競争、孤高の天才少女との出会い、旋律を奏でることをためらう右手の秘密。
若き音楽家・瀧廉太郎は、恩師や友人に支えられながら、数々の試練を乗り越え、作曲家としての才能を開花させていく。そして、新しい時代の音楽を夢みてドイツ・ライプツィヒへと旅立つが……。「西洋音楽不毛の地」に種を植えるべく短い命を燃やした一人の天才の軌跡を描き出す。
時代小説家最注目の俊英が、ついに新境地・明治へ!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
193
『荒城の月』『花』いつ聴いても詞と曲が胸の奥を締め付ける様な楽曲だと思う。久々の谷津さん、滝廉太郎の生涯をしみじみ読んだ。音楽・・ピアノもヴァイオリンも弾けないけれど、天才の努力・真摯に向きあう姿に感動すら覚える。何気なく口ずさんで来た唱歌は廉太郎の作曲が多かったのだなぁ。それにしても23歳を一期としては早すぎる。大好きな姉と同じく結核とは。最期に聴いた水琴窟の音が哀しく響く。2019/10/19
遥かなる想い
163
滝廉太郎の物語である。 明治の時代に 音楽を志す 青春の物語でもある。 幸田露伴の妹 幸との縁も 清々しい。 人との出会いが人を成長させ、音楽が 生まれる…23歳で 肺結核のため、 夭折した 天才音楽家 滝廉太郎の凛とした青春の物語だった。 2020/08/22
へくとぱすかる
98
音楽を一生の仕事にしたい、との思いが、行間にあふれている。略歴しか知らなかった滝廉太郎が、音楽に青春を送る若者として、活字から眼前によみがえるようだ。父との軋轢、火花を散らすライバルとの重奏。運動が得意で、活発な面を持っていたことは意外だったが、それがかえって病魔におかされた悲劇を強く感じさせる。無調音楽への言及など、もし彼が生きていたら、20世紀の現代音楽に、大きな影響を与えていただろう。単なる童謡の作曲者ではなかったのだ。「新聞屋」と妹の存在は、創作かもしれないが、物語のコントラストを作る重要人物だ。2020/11/11
ゆみねこ
94
瀧廉太郎の一筋に音楽を追求した短い生涯。もし、廉太郎があと10年生きていたら、日本の音楽界はどのように発展しただろうか?とても読み応えある1冊です。お薦め。2019/10/23
のんき
93
「もういくつ寝ると お正月〜」「春のうららの 隅田川〜」「春 高楼の花の宴〜」誰もが口ずさんだり、聴いたりしたことがあると思います。作曲したのは滝廉太郎。滝廉太郎って天才だって思ってました。いい先生や師匠に恵まれるという幸運もあったけど、わたしみたいな凡人と同じように、悩みもあったし、すごい苦しんで努力もしてたんだなあ!23歳の若さで亡くなってしまいます。長く生きていたら、もっといろんな曲が生まれていたんだろうなと思うと、滝廉太郎には、もっともっと長生きしてほしかったな2020/09/02