講談社選書メチエ<br> 「私」は脳ではない 21世紀のための精神の哲学

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講談社選書メチエ
「私」は脳ではない 21世紀のための精神の哲学

  • ISBN:9784065170793

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内容説明

今、世界で最も注目を浴びる哲学者マルクス・ガブリエル。大ヒット作『なぜ世界は存在しないのか』の続編にして、一般向け哲学書「三部作」の第2巻をなす注目の書が日本語で登場です。前作と同様に目を惹きつけられる書名が伝えているように、本書が取り上げるのは昨今ますます進歩を遂げる脳研究などの神経科学です。それは人間の思考や意識、そして精神は空間や時間の中に存在する物と同一視できると考え、その場所を特定しようと努めています。その結果は何かといえば、思考も意識も精神も、すべて脳という物に還元される、ということにほかなりません。でも、そんな考えは「イデオロギー」であり、「誤った空想の産物」にすぎない、というのがガブリエルの主張です。「神経中心主義」と呼ばれるこのイデオロギーは、次のように主張します。「「私」、「意識」、「自己」、「意志」、「自由」、あるいは「精神」などの概念を理解したいのなら、哲学や宗教、あるいは良識などに尋ねても無駄だ、脳を神経科学の手法で―─進化生物学の手法と組み合わせれば最高だが―─調べなければならないのだ」と。本書の目的は、この考えを否定し、「「私」は脳ではない」と宣言することにあります。その拠り所となるのは、人間は思い違いをしたり非合理的なことをしたりするという事実であり、しかもそれがどんな事態なのかを探究する力をもっているという事実です。これこそが「精神の自由」という概念が指し示すことであり、「神経中心主義」から完全に抜け落ちているものだとガブリエルは言います。したがって、人工知能が人間の脳を超える「シンギュラリティ」に到達すると説くAI研究も、科学技術を使って人間の能力を進化させることで人間がもつ限界を超えた知的生命を実現しようとする「トランスヒューマニズム」も、「神経中心主義」を奉じている点では変わりなく、どれだけ前進しても決して「精神の自由」には到達できない、と本書は力強く主張するのです。矢継ぎ早に新しい技術が登場してはメディアを席捲し、全体像が見えないまま、人間だけがもつ能力など存在しないのではないか、人間は何ら特権的な存在ではないのではないか……といった疑念を突きつけられる機会が増している今、哲学にのみ可能な思考こそが「精神の自由」を擁護できるのかもしれません。前作と同様、日常的な場面や、テレビ番組、映画作品など、分かりやすい具体例を豊富に織り交ぜながら展開される本書は、哲学者が私たちに贈ってくれた「希望」にほかならないでしょう。[本書の内容]序 論I 精神哲学では何をテーマにするのか?II 意 識III 自己意識IV 実のところ「私」とは誰あるいは何なのか?V 自 由

目次

はじめに
I 精神哲学では何をテーマにするのか?
II 意 識
III 自己意識
IV 実のところ「私」とは誰あるいは何なのか?
V 自 由

原注
文献一覧
概念索引
人名・作品名索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ころこ

48
いわゆる「心脳問題」です。本書は、比喩による説明や哲学者の紹介を兼ねた挿話などが巧みです。論点を見失っても読み続けられ、著者の誘導でまた本論に戻ってくることができて、非常に読み易いです。しかし、それで著者が議論を整理して発展させているかは別でしょう。たぶん「心脳問題」は、脳という器質がその特徴ゆえに物理的なだけではなく、その物理的なものに物理的に理解された心的なものが組み込まれていると錯覚させ、その物理的な心性を人間が観察しようとするときに、心的に戻して理解する錯覚にあります。つまり、物理的に観察したい人2019/09/15

TATA

34
苦心惨憺しながらようやく読了。多分3ヶ月近くかかった。チャレンジしたものの難解、どこがどう面白かったともロクに言えません、特に後半はかなり、うーん。ただ、哲学と脳科学が重なり合って、今のAI論が生まれてくるところで息子と少し話が弾んだので、読んだ甲斐は少しはあったかなあと。2023/02/06

飯田健雄

28
再読しますが、私はこの哲学者の思想には 感服できません。脳が思考(哲学)するインフラなのです。認知症の研究にも言及してほしい。哲学は頭脳の冴えた人々の学問でしょうか。私は身体一元論に組します。2020/08/03

抹茶モナカ

28
平明な文章だったけれど、頭に入って来なかった。神経中心主義を終始批判しているのはわかったのだけれど、自分には内容がよく掴めず、再読の時にでも理解できれば、と、鍛錬のつもりで読み通した。専門書ではないのかもしれないけれど、哲学についてのある程度の理解を要する感じ。古今の哲学者の名前が登場して、著者の博識は伝わって来るけれど、「さすがに学者だな。」と思っているうちに、するりと話が進んでしまっていたりする。今回は頭に入らなかったけれど、いつか機会があれば読み返してみたい本。前作の方がスリリングだった気はする。2019/11/24

ショア

23
難解で途中で挫折...私というものはどこでつくられているのか2023/02/25

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