内容説明
本書は、巨大国家の実像を数字と生活から探る試みである。
例えば、インドでは「牛肉はタブー」だと思っている者は多い。2015年に起きたダドリ・リンチ事件でこうした印象はさらに強まった。この事件は、ムスリム一家が牛を殺して食べ、その肉を保存しているという噂が流れ、それを聞いたヒンドゥー教徒群衆がその家に押し入り、集団リンチの末に一家を死傷した事件である。
ただ、数字はまた別のことを語っている。実はインドはブラジル、アメリカ、オーストラリアと並ぶ牛肉輸出大国なのだ。
ヒンドゥー教において牛は神聖とされ、近代インド最大の分水嶺となったシパーヒーの反乱(1857年)もこの問題から起きたと言えるが、インドを考える場合、歴史から理解しようとするとかえって誤ることが多い。
こうして数字にこだわってインドを眺めてみると、これまでの印象が実態と大きく異なることが随所で分かってくる。これが従来のインド論にはない本書の最大の特長といえる。 本書のもうひとつの魅力は、著者が国際交流基金で「文化交流」を担っていることだろう。その最前線では何が起きているのか? 言語をめぐる日中の争奪戦など今までにない奥行の入門書!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
アナクマ
32
統計と体感によるインドレポート。人口12億。日本とは桁違いの多様性を抱える国、GDPで追い越されるであろう国を知っておく必要がある。◉インドではムスリムは少数派だが2億人近くいる。街中の牛は神聖で飼主がいるが、牛肉の輸出大国でもある。4億人近くのベジタリアン。カーストの実情。ガンディーとアンベードカルの対立。ジュガールという生きる知恵。◉実態が掴めずイメージが先行してしまいがちな彼の国ですが、現実と変容、そして魅力が伝わる内容でした。他者理解・多様性受容についての準備運動としてももう少し読みたい。2019/11/14
nori_y
3
インド人の問題解決法「ジュガール」、好きだな。仕事する上で中々向こうの人と意思疎通ができず頻繁に喚き散らしている同僚?に教えてあげたいものである。いいんだよ、トラブってもジュガールで解決すれば…完璧を求める日本式とは相容れないかな〜何とか中庸がないものか…。また、本書ではインドにおける日本語学習者の状況なんかも知れて良い。折り紙がウケるらしい、と。2020/12/22
にわ
3
タイトルからもっと堅い内容かと思っていたが、エッセイのようでそこに等身大のインドがあるような気がして勉強になった。日本にいると固定化したイメージを他国に対して持ってしまいがちだが、日本と同じように他国も時代の流れとともに変化しているのだと感じた。それにしても著書の方の行動力とバイタリティーには感心させられた。2020/03/06
たろーたん
2
「インド=牛肉タブー」なイメージがあるが、インドの中で牛肉を食べる人は意外と多い。驚くことに、インドはブラジル、アメリカ、オーストラリアに匹敵する世界1~2位の牛肉(水牛を含む)輸出大国である。ただ、それでも牛が神聖化されているため、表立って食べることはできない。また、路上で見かける牛も野生というわけではなく誰かの持ち物で、街に放牧されていると言った方が適切っぽい。そして、人口が多いこともあって、最もベジタリアンが多い国と言われている。約30%以上がベジタリアンだそうだ。(続)2025/02/10
sau
2
知っているようで知らないインド。 インド映画が好きでよく観るのだけれど、へぇーと思うことがたくさんあった。 ジュガールのことも初めて知ったけど、なるほどな!とすごく合点がいった。 2024/08/142024/08/14
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