内容説明
還暦間近の夫婦に、92歳の父と87歳の母を介護する日がやってきた。母の介護は息子夫婦の苛立ちを募らせ、夫は妻に離婚を申し出るが、それは夫婦間の溝を深めるだけだった。やがて母は痴呆を発症し、父に対して殺意に近い攻撃性を見せつつも、絶食し自ら命を絶つ。そして、夫婦には父の介護が残された……。自らの体験から老親介護の実態を抉り出した、凄絶ながらも静謐な佐江文学の結実点。(解説・櫻井よしこ)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
98
人、誰にも訪れる老齢による衰え。私も80歳を前にして、散歩時にそれを痛感しています。さて本作は、老いた夫の両親を懸命に介護する還暦間近な息子夫婦、とりわけ妻であり嫁の姿を克明に綴った物語です。嫁と舅姑との軋轢が、とてもリアルに描かれていて読むのが辛い場面もあります。その原因が舅の「子が親を介護するのは当たり前」と決めつける身勝手にあります。明日の我が身と思うと恐怖感を覚えずにはいられません。とても切なく侘しい気持ちになる重い小説ですが、読んでよかったと思う力作です。一人でも多くの人に読んでほしい本です。2019/11/17
おか
54
久し振りに付箋で一杯になったが 読み終わって暫く経った今になってみると、結局は男と女の生き方、感じ方、表現の仕方の違いなのだと思う。男目線で書かれたこの本を読んで、さもありなんと隣の主人を盗み見てほくそ笑む。そして、歳を重ねてもこの違いは当たり前だが、縮まらない。私は娘達から お父さんが亡くなってから死ぬように(笑)言われているので、この母の様に自分の死が近づいたら主人の首をしめるかも(笑)あとがきに書かれている様に夫だから妻だから、男だから女だからという枠組みを外し、人間としての付き合い方をしていきたい2022/02/11
KEI
46
自分が老老介護に片足を踏み入れている立場として、読むのが辛い作品だった。次第に衰えてくる父母の姿に戸惑い、怒り、認知症になって変わってしまった母親の死を望んでいる主人公「こうなった母には死んでほしい。こんな母から一日も早く解放されたい」と、思いつめていく。読みながら、老老介護の現実を突きつけられ、目を背けたくなる。誰しも、子は親が幸せな最期を迎えさせてあげたいと願うだろう。「長寿」とはそれすら叶えられないものなのか。ラストの言葉「自然にまかせるしかないね」が余りにも切なかった。長寿を喜べない現実は哀しい。2019/12/16
yumiha
42
「身につまされた」と言った夫の本棚から。約30年前のベストセラーだが、初老60代の夫婦が両親の介護を担わなければならないストーリーは、現在でも団塊の世代の介護に当面している団塊ジュニアの必読書だ。平均寿命と健康寿命には約10年ほどのタイムラグがある…つまり約10年は介護(誰かの世話)を受けながら暮らす生活が続くという現実。嫁という立場の蕗子に共感しながら、語り手の夫のトモアキには反発しながら読み進む。特に92歳のじいちゃまの身勝手な言動には嫌悪感が先立ち、お付き合いしたくない、と強く思った。 2023/11/24
背番号10@せばてん。
28
【1995_ドゥマゴ文学賞】2000年8月1日読了。老老介護。ただし、あらすじは忘却の彼方。2000/08/01