内容説明
疎開先で入水した母の遺骸を凝っと見つめる、少年の目。二世帯住宅にするため、明日は家を取り壊すという日、嬉々とする妻をよそに、街に彷徨い出た初老の男の目。――戦争と母の自死を鮮烈に描いて文学的出発を告げた、芥川賞受賞作「北の河」、人も街も変質する世情への微妙な違和感を描く「半日の放浪」など、透徹した観察眼で昭和という時代を丸ごと凝視し続ける、高井有一の自選7短篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
燃えつきた棒
31
どうやら、前に読んだ『北の河』の暗さに魅了されてしまったようだ。 今回もやはり、「北の河」と「海の幸」のニ篇の母物に惹かれた。/ 「北の河」: 【東北に冬は早かった。昭和二十年、初めて雪が来た日の寒さを私は憶えている。短い日の落ち切る一時間余り前から降り始めた雪は、朝からの風に吹かれ、板葺の上に石を置いた家の屋根に落ちては舞うように見えた。しかしそれは長くは続かず、七時過ぎから霙に変った。どの家も早くから雨戸を閉(た)て切り、町の闇は殊更に深かった。 翌る朝は雨が尾を曳き、絶え間なく町を包むように→2024/06/24
ゆうき
2
表題作「半日の放浪」を読んで、老いから目を逸らさずに生きられる人間になりたいと思った。そして「北の河」を読んで、私もいつか高井さんのように自分にとっての「唯一の私小説」を書けるようになりたいと思った。2009/05/01
おとん707
1
冒頭の芥川賞受賞作「北の河」は母の自死を巡る少年の心の描写がひやりとした透明さで描かれている。東北への一時疎開と間もなくの母の死は作者の実体験だし、少年を取り巻く人々の生きざまも当時のこの地の因習を反映しているのだろうが、それにしても物語とは承知していても実話かと錯覚を起こす深い心の描写。同じように東北に一時転居した少年を描いた最近の芥川賞受賞作「送り火」では感じることができなかった行間の人間味を感じる。 定年後の男の心を描いた「半日の放浪」には思わず自分を重ねてしまう。ただ、私は違う生き方をしたい。2019/05/03
ヤマダ キヨシ
0
☆☆2013/08/23
ステビア
0
いや〜地味だね。結構好きだけど。2013/06/14
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