内容説明
対象との距離を微妙にはかりながら、すれすれのところで作品として成立させる、吉行淳之介の短篇集。作者自身の幅を反映して、対象は読者から、バーの女給、エロ雑誌の編集者、棟梁、作者とおぼしき主人公の周辺に登場する諸人物は、いずれも一癖あるが、それを冷静に、ときには諷刺をまじえて、面白さをひきだす。表題作のほか、「青い映画の話」など12篇収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sk
4
短い読み切り程度の短編集だが構造は複雑であり、濃密な性とユーモアの香りがする。私小説の形式を取りながらも「私」の湿った懊悩が主題なのではなく、あくまで「私」を取り囲む人物群に翻弄される「私」の反応を描いていて面白かった。2014/05/10
メルコ
2
5年ほど前に、吉行淳之介の描く下世話な私小説風の作品群に魅せられてハマッていた。しばらくぶりに手にしてみると、粗さや雑なところが目に付き肩透かしを食らう。どうしてそんなに夢中になったのか、孤独なこころに染みてくるものがあるのかもしれない。2013/12/11
hirayama46
1
ぼくはあまり懐古的な人間ではないつもりでいますが、吉行淳之介の小説には昔の空気のようなものを強く匂わせるものがあって、それが実に魅力的に思えます。わりと厭な話も多いのですが、どこか飄々としているあたりも素敵です。クール。2013/05/20