内容説明
対象との距離を微妙にはかりながら、すれすれのところで作品として成立させる、吉行淳之介の短篇集。作者自身の幅を反映して、対象は読者から、バーの女給、エロ雑誌の編集者、棟梁、作者とおぼしき主人公の周辺に登場する諸人物は、いずれも一癖あるが、それを冷静に、ときには諷刺をまじえて、面白さをひきだす。表題作のほか、「青い映画の話」など12篇収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
桜もち 太郎
20
1950年~60年に書かれた作者が30代の短篇集12作品。高校時代に遠藤周作が好きで、遠藤の友人の一人が吉行淳之介という繋がりで知った作家だ(渋すぎる高校生の自分)。短い物語は私小説でもあり、空想の物語でもあり結構主人公にとっては深刻なシチュエーションであるのにも関わらず、どことなく滑稽で物悲しくもある。「青い映画の話」は現代でいう無修正AVの話しで興味深い。「蛸の話」は小説家が自分を切り売りする話で私小説のような感じ。「夕焼けの色」は見世物小屋の少女とカケオチする話のオチが面白い。読みやすい作品集。2026/01/31
sk
5
短い読み切り程度の短編集だが構造は複雑であり、濃密な性とユーモアの香りがする。私小説の形式を取りながらも「私」の湿った懊悩が主題なのではなく、あくまで「私」を取り囲む人物群に翻弄される「私」の反応を描いていて面白かった。2014/05/10
ライム
3
自分の足を喰う蛸のように、自身の著作は実体験を基に書いている…の話は意外でもあり愉快なイメージでもあった。それで読むと、家の塀を勝手に作られて困惑してしまう表題作もよりユニークに感じられるし、すぐに女に手を出して呆れられる「津田のやつ…」も面白さ倍増。女の子に逃げられて一気に精彩を失ったバンドマスターや、サーカス一座内の夫婦喧嘩で客と駆け落ちを図る少女も、実際にありそうな話に思えてしみじみする。そして大量の手紙を送り付けてくる困ったファンへの対応にはさぞ苦労しただろうと同情した。2026/02/14
メルコ
3
5年ほど前に、吉行淳之介の描く下世話な私小説風の作品群に魅せられてハマッていた。しばらくぶりに手にしてみると、粗さや雑なところが目に付き肩透かしを食らう。どうしてそんなに夢中になったのか、孤独なこころに染みてくるものがあるのかもしれない。2013/12/11
hirayama46
2
ぼくはあまり懐古的な人間ではないつもりでいますが、吉行淳之介の小説には昔の空気のようなものを強く匂わせるものがあって、それが実に魅力的に思えます。わりと厭な話も多いのですが、どこか飄々としているあたりも素敵です。クール。2013/05/20
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