内容説明
習近平体制下で、人々が政府・大企業へと個人情報・行動記録を自ら提供するなど、AI・アルゴリズムを用いた統治が進む「幸福な監視国家」への道をひた走っているかに見える中国。
セサミ・クレジットから新疆ウイグル問題まで、果たしていま何が起きているのか!?
気鋭の経済学者とジャーナリストが多角的に掘り下げる!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
64
タイトルの「幸福」はベンサムの「最大多数の最大幸福」、つまり功利主義の公準から。ITを駆使した高度な監視社会は9.11後のアメリカなどで発達、これが犯罪に対する抑止効果をもち「幸福」に近づくという意味で功利主義的には善と考えられるが、個人の自由や人権の観点から問題が多い。したがって民主主義の発達した欧米「市民社会」では、監視者を監視することによりそうした問題を解決しようとする。しかしあまりに急速にIT化が発達した中国では、一方で権威主義国家体制によりそうしたチェックが効いておらず、その必要も問われない。2019/10/08
HANA
63
テクノロジーの進歩と共にその度合いを強める監視社会としての中国。その様子からどうしてもディストピアを想像するのだけど、必ずしもそうではないという事を現地からのルポと共に解説した一冊。監視が上からの押し付けだけではなく、功利主義によって居心地のいい空間を作るために人々がそれに積極的に加担するというのは読んでいて怖気立つけど、よく考えたら日本でもSNS等にその相互監視は認められるなあ等と思った。そういうわけでルポ部分は極めて面白く読めた。水清ければ魚棲まず、自分は明るく清潔すぎる空間には住みたくないけれど。2020/06/07
獺祭魚の食客@鯨鯢
58
「夜警国家」から「福祉国家」への移行は「社会主義国」誕生への危機感から社会政策として産み出されました。もはや今は福祉国家を標榜する意義は薄れてきています。 国家による国民の管理がパターナリズムではなく反乱分子を摘発するためのものになった時人間は自立することを諦めざるを得ません。 そこでは三猿のように外部情報から隔離される代わりに「国家のため」に働く「収容所群島」に化する。 コロナウイルスからの庇護と引き換えに「自由」を引き渡す自治体が広まっていくような気がします。
Sam
56
いまや危機に瀕する民主主義国家に対し有力なオルタナティブとして語られるようになった中国。でも実際には「1984年」で描かれるようなディストピアなのでは?という我々の疑問に対して答えをくれる一冊。テクノロジーによる中国の監視社会化を「功利主義」と「パターナリズム」というキーワードで読み解くと「より安全で、便利で、お金を稼げる社会に住みたい」という人々の欲望を実現するためにそれがいかに有効に機能しているかがわかる。「無理ゲー社会」で生きるよりは、中国で生きる方がよほど生き易いのかも知れない。自分はイヤだけど。2021/12/22
Kentaro
52
天網工程の2000万台に加え、雪亮工程や民間企業が独自に設置したカメラを加えると、2000万台をはるかに上回る監視カメラが、顔認識、画像認識など動画を判断する能力を持ったものに変わっているわけだ。その成功例とされているのが2017年に深圳市龍崗区で起きた誘拐事件だ。同区の監視カメラ網はファーウェイ社によって構築されたもので、事件が起きたあと、警察は誘拐された子どもの特徴を入力して、すぐに子どもと誘拐犯の居場所を特定した。その結果、子どもは誘拐されてから24時間もたたないうちに親元に帰ることができたのだ。2020/08/18




