- ホーム
- > 電子書籍
- > 教養文庫・新書・選書
内容説明
死後、人間の魂はどうなるのか? 肉体から切り離され、それ自身存在するのか? 永遠に不滅なのか? ソクラテス最期の日、獄中で弟子たちと対話するプラトン中期の代表作。魂の存在を哲学し、威厳をもっておだやかに死を迎えるソクラテスの姿は、「知を愛し求める人」そのものと言えよう。ソクラテスが死を迎えるその瞬間は、その簡潔な描写で美しい一幅の絵画のようであり、感動のラストシーンでもある。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
63
ソクラテスの死刑当日が舞台の対話篇。『饗宴』では自分の外にある美を通じて〈美そのもの〉に至る道が描かれましたが、本書は魂に沈潜する内省的な方法によりそれに至る道が描かれているように思います。魂とは何かを語るソクラテスの論立ては相変わらずすっきりと明解で溜息が出るほど。またそれが真の徳への道を示すことにもなっていて、対話により若者を導くその姿は『饗宴』で言及された「正しい道」を示す愛者の姿そのもの。プラトンのイデアについて、哲学者・教育者としての理想について堪能できて、個人的には『饗宴』よりもこちらが好き。2021/01/04
molysk
59
刑死を待つ、ソクラテス最期の日。ソクラテスは弟子たちに語りかける。死は、魂の肉体からの分離に過ぎない。肉体は滅びるが、魂は不滅である。肉体が感じるものは移ろいやすいうわべであり、魂が認識するものは変わらない本質なのだ。普遍的なものは、感覚ではなく、思考によってたどり着くことができると説くのが、プラトンのイデア論。魂の不死を問う弟子との対話は、知を愛する哲学者ソクラテスの歓びであった。自ら毒の盃を口にして、穏やかに死を受け入れる。ソクラテスの魂は滅びることなく、現代のわたしたちにも、善き生き方を問いかける。2021/12/30
ころこ
45
日本語で「魂」というと、心身二元論的な意味だけでなく、固有名の剰余の様な意味も含んでいて、哲学的知識が無い人にでも我々の文化がこれを容易に理解できるというのが興味深いと思います。洞察はそれなりに進んでいるため、かえって本書を読み難くしているのではないでしょうか。「魂」のイデア性に着目するよりも、少年の頃に戦争捕虜として売られ、男娼になった身の上を助けてくれたのがソクラテス、肉体の汚れた欲望から「魂」を助けてくれたその師のためにプラトンに代わって語るパイドンという固有名が「魂」を語ることが大事だと思います。2021/06/27
かふ
23
ソクラテスの死刑前に「死後」について「魂」がどうなるのか?懐疑論者とのの対話篇。二元論で人が死んでも「魂」は不死で冥府に行くという。まあ、今の常識ではそんな話は信じられないよな(宗教的な人以外)。人が真善美を想起でき、それを学ぶのは生まれる以前にすでにそれがあるからだというのがソクラテス(プラトン)のイデア論。その対話相手の二人が神秘主義者と懐疑論者で面白かった。シリアスはピタゴラス学派で「魂」をハーモニーとして捉える。そして、ケベスは懐疑論者だがこれもピタゴラス派でオルフェイス教の神秘思想。2021/02/01
kthyk
20
70歳のソクラテス、神を敬わない発言が罪となり紀元前399年、不敬神を問われ死刑が求刑される。その時28歳のプラトンはアテネを逃れ、その後各地を遍歴する。ソクラテスは裁判から一月後刑死する。彼は毒死の前、弟子であるエケクラテス、シミアス、ケベスとの対話が許され、その詳細がこの書の内容。この書を書いたプラトンは紀元前387年、40歳になりアテネに帰国し、アカデミアの神域に教育機関を開設し、今に残る多くの書が生み出される。今回の再読はこの書を形而上学や哲学というより、ロヴェッリの物理学の延長として読んでいた。2023/07/29