内容説明
ある日突然、最愛の夫を失った私。悲しみの淵から私を連れ出してくれたのは、きのこだった。ノルウェーのノンフィクション・ノベル。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
さつき
69
愛する夫を突然喪った著者が、そのたとえようもなく大きな喪失感から立ち直るまでの物語。再生にはきのこが大きな役割を果たします。ノルウェーではきのこ専門家養成課程があることに驚きました。きのこを愛する人がよっぽど多いのかと思いきや、市販のピザに乗ったきのこすら取り除いて食べない人々もいるとか…両極端ですね。国により食用とされるきのこが違うことにも、びっくり!匂いを感じる感性は地域性はもちろん、個人差が大きそう!以前から子供達と一緒にきのこ狩りに行くことが夢でしたが、いつか実現したいとより強く思いました。2020/02/15
seacalf
65
最愛の夫を突然失くして茫然自失の主人公は、きのこと出会う。語られるのは知的好奇心をくすぐるワンダーランド。すぐに感化されるタイプなので読書中にどうしてもキノコが食べたくなり、ポルチーニ茸のリゾットやキノコ盛り沢山のパスタやらをどんどん食べた。近くにきのこ講座があったら絶対参加したい。そう思わせくれるような文章が沢山。きのこの味、毒、香り、美味しそうなレシピ等々多様な記述で楽しませる。悲しみの淵から人生の鮮やかさを取り戻す過程も丁寧に描かれている。さすがみすず書房、いぶし銀な魅力を醸す作品を提供してくれる。2019/11/06
らぱん
59
①マレーシア出身でノルウェーに住む人類学者による相当ユニークな作品だ。喪失と再生の記録で知的好奇心が生きる力に変わっていく過程が描かれている。夫の突然死で寡婦となった著者自身の内的世界の旅ときのこを巡る外的世界の旅が並行して進む。絶望が起こす無気力で無感情な心の状態と、ふとしたきっかけで出会ったきのこ世界とその住人を、文化人類学的に観察し描写する。驚異的で神秘的なきのこと個性的なきのこ愛好家たちの奇妙な生態。きのこの旅は面白く、率直な喪失体験も機知に富んだ語りで清々しいものに昇華されている。↓2019/09/18
kana
53
長年連れ添った最愛のパートナーを突然失った著者。その悲しみがきのこの探索を通じてどう癒されていったのか、オールカラーのきのこの写真やきのこにまつわる豊富な知識とともに豊富な語彙で綴られるエッセイ。ノルウェーのきのこが身近な生活憧れるなぁ。日本の椎茸や松茸の話も出てきます。間違いなく「きのこ文学」の金字塔的存在といっていい作品です。うっとり。2024/03/29
あさうみ
49
思っていた以上にきのこ百科辞書だった(笑)読み終わった今日一日は一番きのこのことを知っていると自負します(笑)きのこの(本気の)うんちくも面白いのですが、ところどころに亡くなった夫に対する愛情がじんわりととても良い。しみったれず、悲しくなく、優しいきのこと夫への愛。2019/11/28




