内容説明
蒸気機関シリンダーの寸法のムラをなくせ! 産業革命期に生まれた精密の概念を極度の高みに引き上げた技術者や、フォード、セイコー、インテルなどの企業の奮闘を描きながら、微細の極限を目指すテクノロジー物語を綴る。知られざる技術史を明かすマスターピース
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
泰然
24
精密と正確の違いは?本書は今日当たり前過ぎて日常に溶け込んでいる「精密」さに焦点を当てた傑作な技術の歴史書だ。人類はどのようにして精密さ追求してきたかを知る読み物としてもすこぶる面白いし、精密さと個人と社会の幸福の哲学的論考としても良い。黎明期の航海時代を影で支えた帆滑車に経度計算に不可欠な航海時計から現代デジタルに不可欠な半導体チップにいたるまで個人や組織の偉業がエキサイトに描かれる。精密化は要は規格標準化技術によるバラツキ管理の歴史だが、個人の気質はもう不用なのか?著者は日本の事例で巧く思案している。2021/01/01
Shin
19
〈精密さ〉は普段全く意識していないが、現代のエレクトロニクス生活は気が遠くなるような微細加工の恩恵によって成り立っている。人類の歴史の近代化は、蒸気機関を可能にするための工作機械の発明=繰り返し同じ精度でモノが加工できる能力の獲得から始まった。〈精密さ〉の獲得は部品標準化による工業の大量生産ライン化を可能とし、ひいてはそれが資本主義の根幹(というか前提)になっていることに気付かされ、改めて技術と経営、自然科学と人文科学の緊張関係に気付かされて目から鱗が落ちる思いだった。2019/11/17
hide
14
大砲の製造から出発した「精密さ」の概念が研ぎ澄まされて誤差を縮めていく様子は、そのまま蒸気機関→標準化と規格化→自動車の大量生産→航空機製造→宇宙開発→半導体 と人類の技術開発の足跡と重なっている。と同時に、精密さの障害となる「人間」が生産現場から疎外されていく歴史でもある。/精密さという概念をキーに、許容誤差を指標として生産技術史を語った構想が素晴らしいし、エピソードもどれも面白い。生産や技術に興味のある人はぜひ読んでほしい。2023/04/20
六点
14
ワットの蒸気機関が開発された時、シリンダー結合部の隙間は1mmもあったが、開発者達は大変に満足していた。それから200年以上の時が経ち、私達の周囲は「上空を通過する人工衛星からの電波のドップラー効果を計測」する板を持ち歩き、絶縁体が微小になりすぎて、電子が絶縁体を飛び越えかねぬプロセッサを搭載したPCでビジネスに関する殆どの用を足している。著者とともに「精密」を辿る旅は興味深く、また生臭い。「手仕事と精密さに同様の敬意を表す」日本と評する著者の評価は面映いが、精密さと美意識を持つ事は大切だろうね。2020/04/27
NoControl
10
精密技術の発達を体系的に描くというよりかは、その時代ごとの最先端技術とそれにまつわるエピソードの集合体といった趣の一冊。テクニカルな話は少なめ。ただ、個々の話の内容は、分野としても工業部品、半導体、自動車、宇宙開発と幅広く、トピックスも職人芸、規格化、品質保証など多岐に渡っており飽きずに読める。訳文に癖がないもの読む上でありがたい。2020/06/28
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