内容説明
世界人口の約6割を抱え、広大な面積を占めるアジア。本書はそのアジアの歴史を、各国史ではなく一体のものとしてとらえる。各地の土着国家の盛衰と13世紀のモンゴル帝国の誕生から説き起こし、欧米による植民地化、日本の占領統治の影響、第2次世界大戦後の独立と経済発展、そして「アジア共同体」の模索まで。アジア域内の交流と、欧米など外部勢力との相互作用の双方に着目しながら、「アジアとは何か」を探る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
73
そういえば東洋史をきちんと学んでいない、ということで手に取った一冊。個々の事項はとても覚えきれないが、全体のダイナミズムは大づかみできたと思う。人間の欲望の罪は大きい。経済格差の源流は西洋人の植民地化までさかのぼる。もし世界の地形が今とまるで異なったものであったら、などと考えてしまう。2019/06/12
skunk_c
30
ここで著者の言うアジアは南アジア以東でいわゆる中近東と中央アジアは含まない。東・東南・南のサブエリアに大別して、大まかな見取り図を描く。アジアの自立的な社会形成と、そこに入る外的影響(16世紀以降のヨーロッパ、そして第2次大戦以降のアメリカなど)、さらにアジア内で覇権を獲得しようとしたモンゴル帝国と日本(そして今後の中国?)などのダイナミズムを軸に、マクロな視点で歴史を捉えており、「将来を見通す」ための基礎的な材料を提供していると思う。もちろん著者の視点をすべて肯定はできないが、コンパクトで学びやすい。2019/07/08
coolflat
17
33頁。漢人の意識は、漢人が世界の中心であり、周辺民族は文化的に劣った夷狄にすぎないという考え方を特徴にする。これが中華思想である。その際、文化の高い中国と低い周辺国を分ける基準は、儒教の礼節をわきまえているかどうかにあり、漢人は礼節を身につけているが、周辺の異民族はそうではないとみなされた。これが華夷思想である。この二つの優越意識を土台にしてできあがったのが、中国の皇帝が周辺国の支配者を、その国の国王に任命して君臣関係を結ぶ冊封体制であり、貿易も自由貿易ではなく、冊封した国だけ認めたのが朝貢貿易である。2020/08/20
かんがく
16
テーマが大きい新書あるあるだが、一つ一つの記述が薄くて教科書のまとめのようになっている。ただ、モンゴル、欧州、日本、アメリカといった外部勢力と、留学エリートなどの内部勢力を軸に各地域の特徴を比較し、「他律」と「自律」をキーワードに広い視点でアジア史を描いているので、全体の整理には役立った。2022/02/15
さとうしん
13
アジアと言っても中央アジアや西アジアは除外されているのだが、東アジア・東南アジア・南アジアの諸国は意外に共通性が見出せるのだなと思った。印象に残ったのは、多くの国が単一民族型社会から出発したということと、諸国がモンゴル、ヨーロッパ、日本、アメリカの支配を受けながらも常に政治的な「自律」を追求してきたことを踏まえ、今後中国に対しても同様のスタンスを取るのではないか、すなわち経済援助と引き替えに政治的な「自律」を手放すことはないのではないかという見通しを示している点である。2019/05/06