内容説明
明治に生き残った男たちの挽歌。
第10回舟橋聖一文学賞受賞作。
新選組最後の隊長・相馬主計と元隊士・安富才助。
土方歳三の最期を看取ったふたりは、戦いでそれぞれ腕と指を失ったものの、明治の世へと生き残った――。
流刑での島暮らしのなか、思わぬ邂逅と確執を経たふたりの人生は「御一新」の荒波に翻弄されていく。
痛切のラストまで一気読み必至! 松本清張賞作家が人の生き様、心の痛みを精緻に描ききった傑作時代小説!!
※この作品は『本懐に候』(単行本版)の文庫版となります。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Die-Go
48
幕末の京で隆盛を極めた新選組。その明治以後の生き残り、相馬主計、安富才助、沢忠輔ら土方歳三の最期を看取った三人の行く末は交わり、離れつつ複雑に絡み合って行く。そして、相馬と安富の二人の葛藤が呼ぶ結末は。。。 多少の読みにくさはあるものの、所謂賊軍にあたる新選組に属する彼らの生きにくさはその通りだっただろうなと思わされるところもあり、納得の読書だった。★★★★☆2019/08/19
えみ
20
新選組の相馬主計は好きな隊士の一人。相馬の他、新選組の最後を見届けた安富才助・沢忠輔。彼ら元新選組隊士から見る明治の世とは…。動乱の世で徒花として散ることも出来ず、侍として果てることが出来なかった彼らが新たな世に翻弄され、一つずつ大切なものを無くしていく物語。変わらなければ生きて行けず、変わってしまえば失ってしまう。そんな運命に嘆く男たちの生き様、死に様に涙しながら読んだ。『新選組』とは何だったのか。相馬の割腹自殺の報が沢に届いたことから始まる、哀しくて虚しい最後の新選組隊長の死の背景。考えさせられる。2019/08/09
みこ
15
他作品のレビューでも書いたのだが、新選組というコンテンツに底がないのは関係者の誰を主人公にしても作品が成立しうることだろう。本書では明治以降の三人の新撰組生き残りを主人公に話が展開する。特に相馬主計と安富才助の人生の交錯が作品全体に重苦しい雰囲気を醸し出している。二人の函館での負傷の度合いが運命の分かれ道のように書かれているが、仮に相馬が片腕を失わなくともその場合、別の誰かが明治の世で相馬と同じ思いをしたと思うとやるせない気持ちになる。人が生きることの難しさを実感させられた。2019/09/15
ウッチー
10
箱館で4指を欠損した安富才助と片腕を欠損した相馬主計。共に流罪となり、島暮らしでの2人の考え方は相反する。やがて免罪となり本島に戻るも、刀は無用の長者。欠損箇所の違いなのか、奇しくも島暮らしの考え方は2人を交差させてしまう。やはり人生で運は大きく、相馬の生き方に感涙する余りである。 2020/12/26
Falgorou
4
自分の信念や心の拠り所が悉く否定され、消滅した新時代で、何を支えに生きていけばいいのだろう?どんなに絶望した所で、それぞれに平等に明日は来てしまう。でも心が追いつかない。追いつかないというより、旧時代に残してきてしまったようだ。そういう人達の苦悩は、時代は違えど、どんなに努力しても、その時の運の違いで得られなかった夢に失望して無気力に陥る現代人にも通ずる所がありそう。だから彼らの焦りや諦め、嫉妬、自身への卑下や申し訳なさといった負の感情が手に取るように分かるし、深く感情移入してしまう。ラスト号泣必須。2020/07/25
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