内容説明
なにげない夫婦と子どもの、幸せな光景の背後に忍び寄る、得体の知れぬ不安と戦きを衝いた、短篇小説「眼の皮膚」。ふと外へ歩き出した団地住まいの妻が、サーカスを見ての帰り、若者に誘われた、白昼夢的な現実「象のいないサーカス」。日常誰もが心の裡に抱え込んでしまった、平凡な現代人を理由もなく突発的に襲う、空虚感や精神の崩れを描いて、先駆的都市小説となった、著書の60年代の代表作6篇。
目次
不安
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
YO)))
16
『先駆的都市小説となった筆者の六十年代の代表作六篇』,しかし余りにもディストピア的な….「妊婦達の明日」は異臭漂う怪作.顕現した終末たる廃坑の島.男達,妊婦達,白塗りの淫売達,との徹底的なディスコミュニケーション.それに比べると「眼の皮膚」「遊園地にて」は随分と現実の地平に寄せられてはいるが,自己の根本を浸食し腐り揺るがせるような地の毒(とりもなおさず人の毒,の集積,でもあろう)の回り具合は,寧ろ際立っているかもしれない.2014/06/08
AR読書記録
4
うわぁん、気持ち悪いよぅ怖いよぅ... きほん、世の中見えてる次元はひとつでも、なかは何層もあって(いやな言い方だけど美しく整った世界から混沌の世界まで)、それが混淆して顕れているもの(見ているもの)だと思うけど(うーん、うまくいえないな)、見事に不安を煽る層ばかりを拾いとって描いているというか。全体として世界はこんなんちゃうでと思うけど、一場面一場面を切り抜けば確かにそうだとしかいえない気がする。うーむ、見事に気持ちをかき乱された。2016/03/02
いのふみ
2
自身の経験をもとに「青春の讃歌」を描く初期の私小説的な手法から、フォークナーに影響されて変化してきたことがわかった。炭鉱というヨクナパトーファ、少し箍の外れた人物、不安定な現実感、徒労感などにその影響がみえる。2020/09/24
kayoshi
0
★★★★・ 2003/08/19