ネコ・かわいい殺し屋 - 生態系への影響を科学する

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ネコ・かわいい殺し屋 - 生態系への影響を科学する

  • ISBN:9784806715801

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内容説明

約9500年前に家畜化され、文明の伝播とともに世界中に広がったネコ。
人を魅了してやまない彼らの存在は、
鳥類や哺乳類をはじめとする生物群にどのような影響をもたらすのか。
捕食による希少種の絶滅や、人や海棲哺乳類への病気の媒介、
TNR(捕獲・不妊去勢・再放逐)の有効性など、
野放しネコと環境との関わりを科学的に検証するとともに、
各国で行われている対応策とその効果を紹介する。

●6/22(土)日経新聞に書評が載りました。
評者は高橋秀実氏(ノンフィクション作家)です。
●6/9(日)読売新聞本よみうり堂に書評が載りました。
評者は三中信宏氏(進化生物学者)です。
●PETomorrowで紹介されました。

各紙誌大絶賛!

ネコたち、多くが飼い主のいない野放しネコたちは、
アメリカで毎年40億羽にのぼる鳥を殺している。
このことに何かするとして、何をすべきだろうか? 本書はこの難問に取り組んでいる。
あなたがネコ好き、鳥好き、哲学者、倫理学者、
あるいは腸(はらわた)がねじれそうな難問にとにかく関心がある者なら、
本書に心をつかまれるだろう。
――ジャレド・ダイアモンド (『銃・病原菌・鉄』著者)

私たちは自然の劇場が、生きることに勤しむ肉食や雑食の動物たちのせいで、
刺々しいのを知っている。
タカは鳥の餌台からショウジョウコウカンチョウをさっと捕まえ、
リスはカラスの巣から卵を引っつかみ、
カラスはリスの巣から子をくわえ出す。
何が野放しネコを、鳥や他の野生動物を脅かす、際立って危険な存在にしているのか?
本書はいくつかの要因を説明している。
――ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス ナタリー・アンジェ
(サイエンスライター、ピューリッツァー賞受賞)

私は生涯のほとんどをネコたちと暮らしてきた。
ニューヨーク市に住んでいた頃は、自分の知識を
プロのネコ世話係として働くことに使って家計の足しにした。
とはいいながら、飼いネコや野良ネコが土地の野生動物を捕食していく
紛うことなき破壊力に私はいつも感じ入っていた(良い意味ではなく)。
著者らは本書で、地球の生物多様性、環境、
そして公衆衛生に野放しネコが及ぼす脅威について詳細な検討結果を披瀝している。
著者らは、個体数モデリングを用いた多くの科学研究、ネコに関わる疾病、
そして絶滅について説明する。
また、小規模だが非常に声の大きい専門利益団体が、
野生化ネコや野放しネコの個体数大爆発に取り組もうとする如何なる動きをも、
どのように巧みに阻止するかについて、その歴史を伝えてくれる。
本書は、この複雑で世界的な問題を検討し、
解決に向けて科学的根拠に基づいた現実的な提案を行っている。
丹念に調査され、またわかりやすいこの本は、
すべてのペット所有者(ネコを飼っていてもいなくても)の必読書であり、
野生動物にとって、人間にとって、そしてネコ自身にとって最善なのは、
ネコの飼い主が自分のペットを常に屋内に留め置くことだという鉄壁の論考である。
――フォーブス誌ベストブック・トップ10(2016年、保全と環境)

目次

第1章 イエネコによる絶滅の記録
ナチュラリストの灯台守
ニュージーランドの固有鳥類とその絶滅
多産系肉食獣・イエネコの狩猟能力が与える打撃
判明していない絶滅前の分布
イエネコの破壊力――ほんの数年で起きた絶滅

第2章 イエネコの誕生と北米大陸での脅威
野生動物の生息地復元とエコロジカル・トラップ イエネコのルーツ――ヨーロッパヤマネコ
イエネコの進化と拡散
保全生物学の誕生
環境汚染物質と自然保護
絶滅種の14パーセントに関与
ソコロ島における外来種の影響と対策
野放しネコの影響を科学する

第3章 愛鳥家と愛猫家の闘い
野鳥フィールドガイドの誕生
イエネコと人間の関係史
ネコは社会制度のフィルター――ネコの待遇の変化
銃から双眼鏡へ――フィールドガイドの功績
自然界と人をつなぐバードウオッチング
バードウオッチングとネコの経済効果
屋外ネコと人の関係
野放しネコの実態と世話人
野放しネコに対する世話人の認識

第4章 ネコによる大量捕殺の実態
野鳥への脅威を初めて世に問うたアメリカ人
ナチュラリスト大統領の自然保護政策
法律と現状のミスマッチ
鳥類保護に立ち塞がる困難
野鳥個体群の変動とネコの捕食の影響
ネコの脅威は在来捕食者を超える
野放しネコの直接的影響
全米の野放しネコによる野生動物被害数
嵐の勃発――愛猫家らの反応
第六の大量絶滅

第5章 深刻な病気を媒介するネコ――人獣共通感染症
飼いネコから人に感染するペストの脅威
ネコひっかき病のバルトネラ菌
ネコも媒介する狂犬病
アメリカにおける狂犬病感染の主犯、ネコ
ネコ科動物から大拡散するトキソプラズマ症
「寄生生物操作仮説」の実証
人も発症するトキソプラズマ症
人への感染――妊婦に及ぼす危険と統合失調症
野生動物への影響――カラスと海棲哺乳類の事例
ネコ白血病のネコ科野生動物への感染

第6章 駆除 vs 愛護――何を目標としているのか
絶滅危惧種フエコチドリ
フエコチドリ保護のためのネコ狙撃事件
野放しネコの法的位置づけ
希少種保護のための二つの法律
野生化ネコに対する提案と炎上する議論
拒否された投票結果
オーストラリアのネコ問題
人道的駆除計画
固有動物相を大切にするオーストラリア国民
ニュージーランドの取り組み――キャッツ・トゥ・ゴー
自然保護のジレンマ
動物福祉と環境倫理

第7章 TNRは好まれるが、何も解決しない
動物愛護協会で譲渡を待つ子ネコ
ボランティアが支えるTNR活動
TNRへの期待、それに続く失敗と限界
動物倫理から見たTNR
不妊去勢手術
地域ネコのTNR活動の現場
殺処分からTNRへ――地域ネコ管理の転換
TNRを支える迷信
TNRが個体数減少に成功するための条件――高い不妊化率と移入ゼロ
TNR失敗要因とバキューム効果の有無
TNRのさらなる問題点――軽視される生態系
オレゴン州の捕獲ワナ――その後

第8章 鳥、人そしてネコにとって望ましい世界
野放しネコの影響をどう考えるか
野放しネコが減らない背景
ネコシェルターの実状
飼い主側の問題
関連団体やペット業界の役割
飼育許可制を目指す
野放しネコの捕獲排除を巡る科学と非科学
TNRの広がりとその効果への疑問
島の捨てネコを減らす――オレゴン州での事例
多様な団体の協同――ハワイの事例
TNRとネココロニーが容認される特例
野放しネコ対策を現実的に考える
野生化ネコ対策の成功事例と費用
致死的排除法と生物多様性への投資
自然に関心を持つことの重要性

第9章 どのような自然が待ち受けているのか?
対応の遅れがもたらす悲劇
大災害としての野放しネコ問題
乗り越えるべき二つの障壁
野放しネコの影響と私たちの未来


訳者あとがき
参考文献
索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

トリオネア

43
完全室内飼いの猫ではなく放し飼い、あるいは遺棄された野放し猫が生態系に及ぼす影響。猫は繁殖力が強い侵略的外来種であり、アメリカでは毎年40億羽にのぼる野鳥を殺し(爬虫類や哺乳類も)、絶滅種の14%に関与している。野放し猫の人への影響では、ペストや狂犬病、トキソプラズマ感染等があり、猫白血病の感染の危険が猫科野生動物にも及ぶ。トキソプラズマ原虫の感染はすでに蔓延していて、神経や精神疾患にも関係していると言われ、人体に入ると除去できないそう。猫にも、野生動物にも、責任ある飼い主でありたい。ペット所有者必読書。2019/12/01

読書ニスタ

34
外来種である野良猫の在来種への絶滅圧は、想像を超える。遊びで狩猟する。捕獲、不妊去勢、再放逐は野良猫の数を減らす効果がない。アメリカでの狂犬病の媒介はネコ。トキソプラズマ症、宿主の脳を操る魔の病原菌、ネコが媒介。 人間が犯した悪行は棚上げして、野良猫は、駆逐される。完全ペット化して、屋内で飼うしかない。 その愛くるしさから、人道的な対応が求められるが、ネコは残念ながら人ではない。 ジャレドダイモンド推薦。 岩合さんのネコ歩き好きの身としては、辛いの一言。タバコとか、年寄りの運転と同じ末路。2019/05/27

アナクマ

32
読めば納得。ネコは、人と自然と動物の関係を考えるのに最適な生き物だ。◉言われてみれば、侵略的外来種としてネコが気になるのは限られた島嶼での希少生物との関係だけで、身近な環境への影響には鈍感だった。しかし、なんといっても優秀な捕食者ゆえに影響は大きいし、生息域の拡大には人間が関与しているのだから、とにかく外に出してはいけないと結論はシンプル。◉捕食実態やTNR(捕獲不妊去勢再放逐)の有効性議論のほか、感染症の媒介、賛否両論/炎上の歴史など「ネコと人の文化誌」な側面も興味深い。繰り返し読みたいので文庫化熱望。2020/05/28

たまきら

27
人生で猫がいなかった時期のほうが少ない自分。ですから知っています…どんなに猫が狩りが上手か。この本では、この素晴らしいハンターが、もともと生息していなかった地域の動物にとってどのぐらい脅威になりうるかが実例とともに紹介されています。また耳が痛いのが愛猫家の過剰反応。悩ましい問題です。小笠原諸島のノネコ問題といい、この愛すべき動物が無邪気に起こす問題について考えさせられました。…うちの赤トラはゴキブリも狩れませんがね。2020/06/17

阿部義彦

23
なるほどこういう切り口もありか!と思わせる本です。猫可愛がりの日本では理解されにくいかもしれないが。猫が極めて積極的に種の絶滅に関わっているという考察そして、野放し猫の保護、避妊去勢、もしくは殺処分の問題に深くアプローチしています。猫を飼うなら家の中のみで。この事でさえこの日本では徹底されにくいのだろうなあと思います。しかし猫の妊娠率100%の繁殖力を思うと疎かにも出来ない問題です。飼い猫には総てチップを埋め込んで管理してチップの無い猫は処分するのもひとつの方法ではあるが、、まずは問題認識から。2019/05/31

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