内容説明
創設時に埋め込まれた三つのバグによる軍システムの暴走こそが、近代日本の悲惨な終焉をもたらした。外交文書、政治家の日記など膨大な史料から亡国の危機へと導いた根源を浮かびあがらせる。気鋭のイスラエル人研究者による新しい近代史。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Masatoshi Oyu
6
日本軍といえば不服従に独断専行。軍は政府の統制に服さず陰謀を巡らし戦端を開き、国民を破滅に向かって導いた。ではなぜ日本軍は暴走したのか。その理由を近代日本の3つの「バグ」から追求する。不服従の「民主化」、「前線への逃亡」など、日本軍の不服従を説明する新たな切り口は新鮮で面白かった。また、反抗する軍人は、理想化された「志士」に影響を受けており、それが不服従や反乱における楽観主義や杜撰な計画等につながっていたとのことである。 2021/05/02
tsukamg
4
志士たちによる階級差のない越藩ネットワークによって幕府は倒されたが、明治政府が成立してすぐ、必然的に指導者層と下級武士たちの間に階級差が生まれた。かつての志士たちは政府に反抗するようになる。国家が固まるにつれ、明治政府を武力で転覆するのは不可能となるが、反抗そのものは伝統となって軍に残り、舞台を日本国内から、台湾、朝鮮、満州といった外国に移し、続いていった。国を憂える軍人が行動のモデルとするのは志士たちだったのたが、個人的にはそれが一番のバグだと思う。2019/11/04
GASHOW
4
戦時中の日本な、陸軍と海軍が権力争いをしていた。天皇をたてて、内閣の指示にしたがわず統制不能の状況は、まさに暴走た。外国人の筆者からの日本史の分析は趣き深い。暴走の原因は、試験で高得点順に地位が確約されたエリートと派閥だった。この仕組みは、平和で変化の無い状態を維持するチカラがあり、江戸300年をつづかせた。有事には組織の意思決定を誤った方向に導き、明治維新後、今日まで官僚制度として残っている。平和憲法が平和をもたらしたという理屈は、無理があるが、官僚の天下り先に軍事が無い事が寄与しているかもしれない。2019/09/19
カラコムル711
4
著者はまだ38歳のイスラエル人学者である。明治から日中戦争直前までの日本軍人と民間右翼の政府を無視した反逆抵抗の様相と原因を分析している。あまり日本学者がとりあげてない佐賀の乱、閔妃暗殺、張作霖暗殺などを詳しくとりあげている。また河本大作、橋本欣五郎らの思想と行動にも詳しい。こうしてユニークな視点を提供し分析しているのに感心した。書簡や日記などの史料を多く使っているのも特徴だ。外国人の研究参加は歓迎すべきことだ。良書である。 2019/07/30
linbose
1
★★★★☆2019/11/22
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