内容説明
“大虐殺の首謀者”として裁かれた軍人は中国を深く愛していた。ついに明らかになる南京戦の全貌──。
折り重なる屍体。過酷な戦場の現実。押し寄せる日本軍に中国軍司令官は逃亡する。軍律に厳しい松井と血気にはやる師団長の確執。中国便衣兵の無法と日本兵の混乱……。その時、南京城内で何が起きたのか?
南京事件の罪を問われ東京裁判で処刑された松井石根を、中国人は今も「日本のヒトラー」と呼ぶ。著者はこの悲運の将軍の生涯を追いながら、いまだ昭和史のタブーとされる事件全貌の解明に挑む。
【目次より】
第1章 日中友好論者への道
第2章 大亜細亜協会の台頭
第3章 上海戦
第4章 南京戦
第5章 占領後の南京
第6章 興亜観音
第7章 東京裁判
最終章 歿後
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
あちゃくん
32
今年、縁あって中国・南京を訪れる機会があったので、昔南京であったことをより深く知りたいと思い手にした一冊です。南京攻略を指揮した松井石根大将にスポットを当てて書かれています。松井大将がこの本に書かれているような人物だったとすれば、無念さや失望を抱え、巣鴨プリズンで絞首刑になったんだなと、不条理を感じます。この本読み終えて、現代日本に生きるものとしてより太平洋戦争について、日中戦争について、東京裁判について、知る必要があるなと痛感しました。2013/06/26
北本 亜嵐
12
「南京事件」が議論される時、必ず出てくる「松井石根」という名前。中国では「日本のヒットラー」と呼んでいる。果たして彼はどんな人物だったのか?そこには「親中派」の顔が出てくる。また、蒋介石とも親交があったという。筆者は様々な資料を用いて誇張や賛美をすることなく、その実像に迫っている。現在の「日中関係」松井大将はどう見ているのだろうか・・・・。知らなかった部分もあったけれど、読み応えのある一冊でした。2015/05/26
兵衛介
5
上海~南京戦の指揮官松井石根大将の生涯を描く評伝。日中友好という信念を最後まで墨守し、それが故に皮肉な運命を辿った老将軍には同情するが、そもそも軍人たるもの、特定国に特別な感情や思い入れをもって行動することがそもそも間違いだったのではないかと思う。日本の高級軍人は本業たる軍事よりも別のところ、政治思想や人柄などが話題になる。ところで、数年前に出版されている松井石根の伝記ともいえる早瀬利之著『南京戦の真実』が参考文献になく言及もされていないのが気になった。2011/08/01
かに
4
A級戦犯の一人である松井石根は、南京戦の際の上海派遣軍司令官であった。そのため南京事件の責任を問われて処刑された。松井は親中派であり、日中を含めアジアが力を合わせ、欧米諸国からアジアを取り戻すという思想の持ち主であった。蒋介石とも仲良く、蒋介石との連携を模索していたが、数々の蒋介石の行動により、中国国民を救うために、蒋介石打倒に舵を切る。しかし、根本の考えはあくまでも中国のため、アジアのためであった。南京事件は計画的な虐殺があったわけではなく、軍紀の乱れた兵達による散発な事件はあった。2023/07/13
0717
3
陸軍随一の親中派で知られる松井石根大将の生い立ちから、東京裁判においてありもしない日本軍による南京虐殺の責任を取らされ、処刑されるまで。著者の早坂さんは、松井大将、樋口季一郎中将などあまり光の当たらない人物に焦点をあて、いい仕事をしているなと感じました。2013/09/12
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