内容説明
室町期に西日本きっての勢力を誇った守護大名・大内氏の31代当主・義隆は、とりわけ貴族趣味が強く、武力強化よりも京都文化の摂取に熱中する。山口を京都の街並みに模し、自ら公卿を真似、文化人を招いては宴を催した。その結果、家臣間に亀裂を生み、やがては救いがたい破滅への道をたどることになるが……。大名よりも公卿になりたがった大内氏の、栄光と失墜を鮮烈に活写する、歴史長編。大内義隆の哀しく数奇な生涯、哀切のロマン!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
石破茂辞めるなと思う24歳レースクイーン・寺
65
良い小説を読んだ。古川薫、お勧めである。戦国時代「末世の道者」と呼ばれた山口の王・大内義隆の物語。家老・陶晴賢の謀叛で切腹するまでの滅びの8年間を描いたもの。主人公はむしろ、義隆の頽廃を眺めながら死を共にした近習・冷泉隆豊である。この隆豊、蟹の様な厳つい風貌の巨漢で醜男なのだが、歌道も達者。義隆に笑い者にされながらも忠勤に励む見事な武将である。その隆豊の胸中には義隆の妻・万里小路貞子への忍ぶ恋があった…。大内義隆の呆れ果てたる堕落がうんざりするほど描かれるが、この哀しみを湛えた物語は実に切ない。2015/09/04
エドワード
18
戦国時代、周防国の大内氏は、守護大名から頭角を表し、山口を拠点に覇を唱えた。当主大内義隆は、公家の生活に憧れ、山口の町を京に見立て、文化の華を咲かせる。家臣の冷泉隆豊の視点から描く、大内家の落日。戦国の世とは思えない義隆の奢侈な生活、家臣はいがみあい、正室と側室は争う。でたらめで勝手気ままな義隆の振舞いに、家臣の心が離れるのも仕方ない。武人の典型のような陶隆房―後の陶晴賢―の謀反により、山口の町は炎上する。諦めが悪く、どこまでも逃れようともがく義隆と、最後まで忠義を尽くす隆豊の対照が印象的な戦国挽歌。2017/11/10
kmiya3192
2
天文12年大内義隆は攻め込んだ尼子に惨敗し出雲揖屋から山口へと逃げ帰る。その後の義隆は臣下の争いになすすべもなく。それでも明との貿易やザビエルの来訪にキリスト教布教にも一役買う。しかし天文20年陶隆房と相良武任の争いから陶は義隆と袂を分かつ。このことが義隆には致命傷となる。そして8月28日山口では都からと九州大友からの使者の饗応が行われていた。ここへ陶軍が攻め込んだ。義隆は仙崎へ逃れるが海路がふさがれ大寧寺へ。ここで自刃で大内の家は途絶えることとなる。2022/05/10
BIN
2
大内義隆の近習で無骨者の冷泉隆豊から見た大内義隆。なんか読んでいくうちに大内義隆が劉禅に見えてきた。醜い正室争いやおべっかばかり上手な相良、あとは男色相手ともう腐敗する要因が満載。滅びるべくして滅んだ感じ。冷泉の奥方さまのちょっとした恋には癒される。2012/08/02
韓信
1
出雲攻めの失敗以降、滅亡への坂を転げ落ちる大内義隆と家中の様子を、無骨な忠臣たる冷泉隆豊の視点で描く歴史小説。素材の新鮮さと端正な筆致、丁寧に描き込まれた人間模様で惹き込まれる佳作。文武の派閥の対立や閨閥も絡む複雑な人間関係、座して滅亡を待つ義隆を説得的に描き、無骨な隆豊の恋で彩りを添え、興趣が尽きない。上り調子の頃の義隆も描いて欲しかったと思いつつも、大内家の斜陽を切り取る現形の方が完成度は高いよな…。2023/09/05