内容説明
大勢の人でにぎわう京は北野天神の境内で、どろぼう扱いされて泣いていた天涯孤独な少女・小菊。彼女を救ったのは18、9歳になろうかという若く美しい女性だった。屋敷に連れられていくと、女性はルチアと呼ばれていた。キリシタンなのだ。江戸初期のキリシタン弾圧は、すでに始まりつつあった。小菊は未知の世界におびえるが、ルチアはその聡明さを見込んで、読み書きや算法を学ばせる。江戸時代のベストセラー和算書『塵劫記』の著者・吉田光由(与七)を脇役に配し、黎明期の和算と喪われていくキリシタン文化との出会いを、小菊とルチアの交流を通して心洗われるような物語に仕上げた。やがて弾圧の嵐が強まるなか、2人は京を離れるのだが……。ルチアの慈愛に満ちた美しい心と、小菊の健気な成長に胸を打たれる。ヒット作『算法少女』の著者による「和算小説」の名著。『塵劫記』成立の謎にも触れ、一般読者だけでなく和算ファンにも楽しめる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
もんらっしぇ
71
『算法少女』https://bookmeter.com/books/545410 が大層良かった印象の著者。本作は、不幸な生い立ちで数奇な運命に翻弄される少女・小菊と、キリシタンで謎多き美女ルチアの出会いと交流を通し黎明期の和算と、弾圧・疎外されつつあるキリシタン文化との交錯を背景に、西洋の科学・物質文明vs.宗教に基づく心の豊かさの対比を江戸時代の有名な和算書『塵劫記』の著者・吉田光由を絡めて描きます。「油分け算」の新解釈なども出てくるのも興味深く、基本が児童向けに書かれているため?サクサク読める良書。2022/09/29
へくとぱすかる
68
江戸初期の京都を舞台に、身寄りのない少女が、ふとしたきっかけで、和算の源流を作った人物とかかわっていく。平山諦『和算の誕生』(1993)に述べられている、和算キリシタン起源説を元に、よくぞここまでと思えるほどに想像の翼を広げ、しかも物語としても心に残る。すでに1976年の時点で、このような児童文学があったことには驚くが、今も平山説が証明されていないのが残念。キリシタン弾圧のため、証拠が残らなかったことを物語るのか。2019/05/05
真理そら
64
『算法少女』を楽しく読んだのに寡作すぎて…と思ってたらこういう作品もあったんですね。紹介してくださったもんらっしぇさんには感謝感謝です。徳川の世になってきりしたん取り締まりが厳しくなった時代を描いている。不運続きの少女・小菊の生き方と『塵劫記』の吉田光由の生き方をさらりと対比させながら描かれている。角倉素庵が重要な役どころなので辻邦生『嵯峨野名月記』で濃密に描かれている嵯峨本に触れられていたのも嬉しかった。2022/11/19
はつばあば
52
江戸時代の初期にもうキリシタン弾圧は始まっていたんですね。角倉了以は京の大富豪・それに連なる吉田一門の与七をからめての作品。泥棒扱いされていた小菊を救ったルチアのキリストの教え、その教えに準ずる人々。小菊が幕府や他の人々に責められるキリスト教から逃れたい気持ち・・ルチアが身を挺して救った小菊が悟ったのは「思し召し」だけだろうか。地動説など当時の日本では異端だったけれど今は当たり前の事とされている。現在地球上のあちこちで揉めている戦争と温暖化にこれから各国は貧しくなり人々は地球を棄てて他の星へと移るだろうな2022/11/21
モリー
36
題名はキリシタンの数学書という意味。キリシタン文化は一時期、京や大坂で美しい花を咲かせた。しかし、この物語で描かれる江戸初期という時代は、キリシタンに対する弾圧が過酷さを増した時代だ。エウロッパから宣教師らによって伝えられ、一時は大いに受け入れられたキリスト教と学問は、弾圧によって力を削がれてゆく。作者はその様相を、想像力で生み出した少女の目を通して見事に描き出している。あとがきには、PHP研究所から「少年少女の心を美しくする物語を書いてほしい」と依頼を受けたと記されている。見事に成功していると私は思う。2019/01/13
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