内容説明
二一世紀に入り、尖閣諸島や南沙諸島の領有問題などで中国の愛国的な行動が目につく。なぜ、いま中国人はナショナリズムを昂揚させるのか。共産党の愛国主義教育や中華思想による強国意識からなのか。西洋列強や日本に蚕食されてきた一九世紀半ばから、日本の侵攻、さらに戦後中国が強大化するなか中華民族にとってナショナリズムとは何であったのか。本書は、清末から現代までの一二〇年の歴史のなかで読み解く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
43
主に清末以降の中国におけるナショナリズムの形成(の紆余曲折)を歴史的にたどって記述。したがって内容的には中国近現代史といえる要素もふんだんにある。ここで問題になるのはやはり民族。清が満州族という中国における少数民族の支配であったため、辛亥革命を担った国民党(思想的支柱の孫文)は、漢民族主義的なナショナリズムを背負い込む。しかし同時に清の領域を保持するためには多民族国家としての国民主義の確立も必要で、共産党支配になってもこの問題がつきまとう。スターリンの民族論を取り入れるなど、ソ連の影響が毛沢東時代に強い。2019/12/10
かごむし
24
清末から現代までの中国ナショナリズムについて語られる。清末とは、列強による蹂躙との闘争の歴史であり、近代化を目指した季節であり、激動の中で、その視界には常に日本が映っていたことを今さらながら実感する。文化大革命の混乱を経て、経済大国へと成長した中国の大きな流れの中に、国家による政治的思惑があり、民衆からの突き上げがあり、そのことが現在トピックスにもなっている少数民族の問題、日本との歴史認識問題、東南アジアへの武力での威嚇など、外から見ただけではよくわからなかった中国という国を理解できる1冊であったと思う。2018/06/20
coolflat
18
中国のナショナリズムは、義和団事件(1900年)→第二辰丸事件(08年)→辛亥革命(11年)→21カ条の要求(15年)→五・四運動(19年)→五・三〇運動(25年)→八・一宣言(35年)を経て発展する。当初(義和団事件)は対帝国主義ナショナリズムだったものが、段々(21カ条の要求)と対日ナショナリズムへと変容した。日中戦争において、この対日ナショナリズムの高まりが、国共結束を促し、さらに共産党は抗日民族統一戦線を旗印に、中国全土の支持を集める事を可能にした。35年を境に中国全体がナショナリズム一色となる。2017/10/26
ラウリスタ~
14
非常に勉強になる。朝貢・冊封体制は皇帝を中心とした同心円状のグラデーションで「中華」を認識。西洋的な均一で不可分の領土認識は、列強による瓜分による危機後に生まれる。日本を介して(漢字で)西洋の概念を受容、近代国家成立を急ぐ。特に日本が少数民族の独立と称し満州国を建設したことから、国境付近の少数民族問題を、内政干渉とみなしがち。戦後ソ連という主要敵があったために日米とは現実的な和解。欧米、日本をモデルに西洋的国家を作り上げるも、それが「国際秩序」なるものによって常に阻害されてきたという被害者意識。公理<実力2019/12/19
さとうしん
11
日本との関係については、二十一ヵ条の要求、済南事件、そして日中戦争でそれまで外国人と接触したことがなかったような農村にまで侵入したことなど、反日感情がナショナリズムと不可分の関係になった歴史的な経緯を的確に押さえている。その他の個別の議論は正直食い足りない部分もあるが、概説としてはこんなところだろうか。2017/06/26
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