コルク<br> 横浜1963<文庫版>

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コルク
横浜1963<文庫版>

  • 著者名:伊東潤【作者】
  • 価格 ¥814(本体¥740)
  • コルク(2019/07発売)
  • ポイント 7pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784167913137

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内容説明

横浜生まれ、横浜育ちの著者初の社会派ミステリー。
東京オリンピックの開催を翌年に控え、活気に満ちていた横浜。そんな時、横浜港で若い女性の死体が発見される。死体にはネイビーナイフの刺し傷、爪の間には金髪が残っていた。立ちはだかる米軍の壁に事件は暗礁に乗り上げたが、神奈川県警外事課の若い警察官・ソニー沢田は単身、米海軍捜査局に乗り込んだ。日系三世の米軍SP・ショーン阪口は、ソニーの熱意に応え捜査協力を決意する。事件の真相に迫ろうともがく二人の前に、戦争の大きな負の遺産が立ちはだかる。
解説 誉田龍一 カバー写真 三浦憲治
〈著者からのメッセージ〉
私は1960年に横浜で生まれました。実は現在も同じ場所に住んでいます。生まれ故郷が好きかと問われれば、何とも答えようがないのですが、とくに引っ越しの必要性もなかったので、流れに任せて住んでいる感じです。ところが55歳という年齢になり(注釈 : 2019年現在は59歳)、さすがに昔の横浜が懐かしくなってきました。平成に入ってからの横浜は大きな変貌を遂げ、昔の風景が、どんどんなくなってきたこともあります。数年前、いつか当時の横浜を舞台にした小説を書いてみたいと思い始めました。1960年代前半の雑然とした横浜の空気を再現したかったのです。それだけ、当時の横浜は不思議な魅力に満ちていました。
その提案を受け入れてくれた版元により、このほど初のミステリーとして本作を上梓することができました。これまで歴史小説しか書いてこなかった私としては、新たな挑戦になりましたが、書き始めてみるとスムースに筆が走ったのには驚きました。やはり、よくも悪くも横浜への思いがたまっていたのでしょうね。とくに今回は、視覚、聴覚、嗅覚、感覚に関する表現を駆使して、1963年の横浜を再現することに力を入れました。「文字の力はバーチャル・リアリティに勝る」ということを唱えてきた私としては、読者に1963年の横浜に行ってもらうことを心掛けました。それゆえ行間には、当時の雰囲気が息づいているはずです。過去の横浜を知っている読者も、知らない読者も、それぞれの横浜を脳内に再現できると思います。また私は、この作品の中に多くのメッセージを込めました。現在、世界は中国やロシアといった覇権主義国家の台頭によって混迷を深め、これまで以上に日本は、同じ民主主義を国是とする米国と密接な関係を保っていかねばならない時代になりました。だが戦後、日米はどのような関係にあったのか、詳しく知る人がどれだけいるのでしょう。とくに駐留軍と共存してきた日本の庶民が、彼らに対して、どのような感情を抱いていたかについて書かれたものは極めてまれです。そうした巷間に生きた人々の息遣いを再現し、そこから、これからの日米関係はどうあるべきかを、読者個々に考えてもらいたいというのも、本書を書く動機になりました。時代は移り変わっていきます。それだけは止めようがありません。ただ過去を知る者が、少しでもその痕跡を残そうと努力することで、当時の人々も現在を生きるわれわれと変わらず、懸命に生きていたことを伝えられるのではないでしょうか。伊東潤初のミステリー『横浜1963』を読み、一人でも多くの読者に「当時の横浜に行ってみたい」と思っていただければ、作者としてはこの上ない喜びです。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

岡本

115
歴史小説家・伊東潤の初のミステリー小説。1960年横浜生まれの著者だから書ける戦後日本が舞台の今作。戦後75年が経ち日米同盟が当たり前な今日しか知らない人には刺激的過ぎる程の反米・反日感情が至る所に。ミステリーとしては勿論、近現代歴史小説としても楽しめる一冊。著者の歴史小説は幾つか読んでいるが、ミステリー物も読んでみたくなった。2020/03/19

chantal(シャンタール)

92
1956年にやっと米軍の接収が解除された横浜港。物語は東京五輪を翌年に控えた1963年、横浜にはまだ多くの米軍接収地があり、米兵の犯罪を日本の警察が検挙する事も出来ない。そんな横浜港で若い女性の他殺体が発見され、アメリカ人とのハーフである見た目は白人の日本人警察官ソニーと日系三世の米兵ショーンが事件に挑む。米兵が日本で犯す犯罪も取り締まれないことの理不尽、白人の有色人種に対する差別、今も昔も変わらぬこの不条理。正しい事をして修羅を歩むか、迎合して安全な道を行くか、人生はままならない。横浜が無性に懐かしい。2020/01/30

のぶ

85
日頃、時代小説を読む事の多い伊東さんだが、現代を舞台のミステリーでも楽しめる作家であることが分かった一冊だった。オリンピックの開催を翌年に控えた1963年の横浜で若い女性の死体が発見される。捜査にあたるのは神奈川県警のアメリカ人とのハーフ、ソニー沢田と、日系三世の米軍SPのショーン坂口。ミステリーとしても楽しめるが、その要素は比較的単純で、自分が興味を持ったのは、オリンピックの好景気に沸く街を描く半面、戦後18年を経ても、日米の地位の差があまり解消されていない事だった。読みやすく、大変に面白い小説だった。2019/08/10

fwhd8325

70
あとがきに「60年代前半の雑然とした横浜の空気を再現したかったのです」「とくに今回は、視覚、嗅覚、聴覚、嗅覚に関する表現を駆使して」とあるように、リアリティを感じる作品でした。私自身は、当時の横浜の様子を知りません。それでも、横浜という街が醸し出す空気を感じます。翌年にオリンピックを控え、日本は戦後から脱出しようとしていたかもしれませんが、まだ、戦後18年です。おそらく、米兵を見れば卑屈になってしまう人たちが多かったと思います。つかの間、タイムスリップした気分を楽しみました。2020/05/21

k5

64
歴史小説家による、横浜を舞台とした警察ミステリ。謎解きはわりとシンプルなんですが、白人の外見を持ちながら日本人社会で生きてきたソニー沢田と、日本人の外見をした米軍人ショーン坂口のバディがいい味出してます。何よりも横浜の描き方がうまいなあ、と思いました。2021/11/20

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