内容説明
明治維新を間近かにした文久2年12月、攘夷の激情をおさえかねた長州の若手藩士13人が、横浜の英国公使館を焼打ちする。20歳の瓜生愼蔵もその中のひとりだった。彼は激変する歴史の流れに順応することを拒み、独自の道に入る。それは或る娘との出会いで宿命づけられた人生……。歴史小説の俊英による野心作。
感想・レビュー
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さっと
8
高杉晋作を筆頭に、長州藩士十三人、血気にはやる若者たちが起こした英国公使館焼打ち事件。それに参加した、最年少で剣客として腕の立つ瓜生慎蔵を主人公に、それぞれの幕末の動乱を描いた物語。といっても、半数以上が途半ばでたおれるし、生き残ったほうも栄職につくもの、民間に下るものさまざま・・。奇兵隊の俗論党に対する蜂起のときに負傷した主人公のおかげで、倒幕の模様はまるまるカットなのだけれど、仏師となった慎蔵と、廃仏毀釈を推し進める政府(かつての仲間ね)と、明治以降も、それぞれの生き方のコントラストが効いてて読めた。2015/02/13
まつ
3
瓜生慎蔵。初めてみた名前だった。長州藩士による横浜御殿山の英国大使館焼き討ちに参加していたとされるが、この小説の架空の人物だろうか。ネットで軽く調べたが分からず。幕末から明治の終わりにかけての瓜生慎蔵の人生を描いた時代小説。居合いを得意とする武士として人を斬っていた慎蔵が、様々な修羅場をくぐった後に、仏像を彫る京仏師に弟子入りする物語。美緒という女性との恋模様も折り重なって先が気になる作品だった。時代に翻弄される慎蔵と周囲の人々、十三人の修羅たちの生き様は切なく、それでいて活気があった。2020/08/29