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内容説明
なぜ人々は戦争の歴史でいがみ合うのか。なぜ各国は戦争の歴史で争うのか――日本近代史の碩学が学生との対話を通じて「歴史」と「記憶」の意味を深く探っていく。ニューズウィーク日本版で大反響を呼んだコロンビア大学特別授業、待望の書籍化。主な内容「戦争の記憶」の語られ方/「歴史」と「記憶」の違いとは/変化する「共通の記憶」/それぞれの国で語られる「第二次世界大戦」/日系アメリカ人の物語が認知されるまで/「記憶の領域」には四つの種類が存在する/クロノポリティクス――現在が過去を変える/慰安婦問題が共通の記憶になるまで/誰が記憶に変化を起こしたか/記憶を動かす「政治的文脈」/戦争の記憶は、自国の都合のいい形につくられていく/アメリカが原爆を正当化する理由/自国の「悪い過去」にどう対処すべきか/過去と未来に対する個人の「責任」ほか
目次
はじめに
1 MEMORY AND HISTORY
「歴史」とは何か、「記憶」とは何か
2 OPERATIONS OF MEMORY
「戦争の記憶」はいかにして作られるのか
3 THE COMFORT WOMEN IN PUBLIC MEMORY
「慰安婦」の記憶
4 THE PAST IN THE PRESENT
歴史への責任――記憶が現在に問い掛けること
おわりに
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
72
戦争の記憶は国家内の政府やメディアによって形作られるものなので、たいていの場合強いバイアスがかかる。そこを超えた、ひとりの人間としての視点を持てるかが鍵になる。学生さんたちは皆さんよく勉強していらして互いの違いを認め合っていて、素晴らしい。一部承服しかねるところもあったが、未来志向であることこそが大切。2019/07/24
みねたか@
39
学生との対話を通じ,近年になり慰安婦問題が注目されるようになった要因や,日本で「国民が指導者のせいで悲劇的な戦争に巻き込まれた」という記憶が定着した過程など,アジア太平洋戦争の記憶の定着と変容を解き明かす。記憶の変化の要因は政治と活動家らによる下からの刺激。冷戦の終結という大きな世界変動が,各国に政治による新たな記憶の形成を促していく論は目の前の霧が晴れるよう。そして,慰安婦,ホロコーストの記憶を定着に至らしめた被害者たちの痛みと強い思いに背筋が伸びる。歴史を学ぶ意義を考えさせる良書。2022/04/08
Nobuko Hashimoto
35
ネット連載のときから気になっていた講義録。「記憶の政治」の授業の導入テキストに使えそうかな。本書で取り上げられている個別事例を検討するというよりは、「記憶」の分析枠組みの部分を整理するのを主眼として。それにしても、個別の事例(真珠湾、原爆、慰安婦)について語るとき、学生(または親の)出身国が見事に「記憶」や主張に影響しているのが見てとれて興味深い。さらに、本書では検討されていないが、同質的な「記憶」を持つはずの日本人のなかで「記憶」をめぐって見解が対立することを分析・考察するのも面白いかもしれない。2019/12/22
さきん
33
中国、韓国、アメリカ、カナダ、日本の学生を囲んで歴史の記憶について意見を交える。国家間を超えて記憶が共有される事例が増えてきている。事例として、原爆、パールハーバー、捕虜の扱い、移民収容所、慰安婦、ソ連軍の婦女暴行が挙げられている。時代が進むにつれて、倫理観が変容していき、倫理のハードルが高くなっていると著者は指摘していて、その通りだなと思った。2019/08/16
HMax
32
「メタ・メモリー」、公での論争(マスコミ・メディアを含む)を通じて知る記憶。実体験ではなく、真実か嘘かとも別物。慰安婦問題、欧米での日本非難、これもメタメモリーによる。第二次大戦当時は欧米でも慰安婦がいたが、「当時」は当たり前のことであり、すっかり記憶からなくなっていた。そこに「現代」では許されない慰安婦問題を韓国と朝日が日本を非難していることが記憶となり、慰安婦問題=日本となった。日本が慰安婦問題を今の問題として再定義し、女性に対する暴力を防ぐ活動機関を国連に設置してはどうだろうか。2019/11/30
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