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内容説明
人生の最終段階においては、医療の選択をするのが難しい。最先端の治療が必ずしも患者本人の価値観に沿うとは限らないからだ。ゆえに、家族も悩み、揺れる。患者を大切に思うからこそ、ケアの現場は混乱を深めることになる。本書では、日本老年医学会で臨床倫理を牽引する著者が、医療・ケアの現場を丹念に調査し、医療者、患者、家族の苦悩をすくいあげ、人生の最終段階における医療はどうあるべきか、その考え方を示す。老年医学と臨床倫理の知見を踏まえつつ、超高齢社会における医療とケアの役割を整理する。
目次
はじめに ある症例が教えてくれること
第1章 食べることができなくなったら──人工的水分・栄養補給法の課題
第2章 胃ろうが意味すること
第3章 混乱からガイドライン策定へ
第4章 医療とケアの選択──どのように意思決定支援すべきか
第5章 いのちをどう考えるべきか
第6章 事前指示からアドバンス・ケア・プランニングへ
第7章 フレイルの知見を臨床に活かす
第8章 終末期医療とエンドオブライフ・ケアの違い
第9章 尊厳死・安楽死問題とは何か
おわりに 老いて弱くなること、弱くあること
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
v&b
2
結論めいたものはないが、本人の意志尊重が大前提になっている。 年を経て強い立場から弱い立場になった人がそれを受け入れること、そういう道筋を作ること、その必要を本の結部から肯定的なメッセージとして受け取る。 序盤は誘導的な話の流れ、表現もあると感じた。通して読めば、中立的ではないかと思う。 結局は必要になる話だし、ワイドショーの枠で毎日こんな話題をやってくれたらと願うが。2020/10/08
かめかめ
2
本人らしい最期を迎えるためには、人生の最終段階の医療や介護について考えることも必要です。「自分はいったいどうして欲しいのか」をできるだけ具体的に表現するといいと思うのですが、その方法論として共同意思決定(SDM:shared decision making)とACP(advance care planning)のことが詳しく書かれています。その前段階としての臨床倫理についても細かく書かれています。2019/12/09
Shiroshi Sato
1
目からウロコ落ちまくりでした。昨年から、筆者らが主宰する研究会に参加しているが、こういうバックグラウンド、知識と経験があってのコメントとは、ものを知らないにも程がある、と痛感した。他の、複数にACP関連の知見にあたり、現段階の思考を纏めてみたいと思う。2022/03/15
きぬりん
1
いわゆる終末期医療・ケアの問題を、胃ろう造設の問題を中心として考察する。これまで日本では摂食障害の患者に対して胃ろうを造設し、生存の延長を図ることが半ば当然視されてきたが、患者本人の価値観に照らしたQOLの向上を医学的介入の目的と見る場合、それが必ずしも適切とは限らない。医学的な判断だけでは倫理的に適切な医療上の意思決定は実現されず、医師のパターナリズムと患者の自己決定権尊重を止揚した共同意思決定が求められること、患者や家族の「物語り」の充実を目指した丁寧なコミュニケーションの必要性などが主張されている。2021/10/12
ドア
1
父親が脳出血で倒れた時、わたしたち家族は父親の最後を決めてしまった。手術したら延命できたかもしれない。でもしなかった。約3週間、点滴だけで生きて天国へ旅立った父親は、幸せだったのだろうか? あの時の選択に正解はない。でも、父親は「それでええんよ」と今でも笑ってくれていると信じている。 2019/08/30