内容説明
太宰、漱石、鴎外、賢治、芥川から、ドイル、アンデルセン、ケストナー、ベケットまで。古今東西の名作をもとに編み上げられた16のパスティーシュ小説集。禁酒時代にアブサンの代用酒として作られたパスティスが、以後もずっと人々の口を愉しませ、酔いを誘ってきたように、オリジナル作品を知らなくても、知っていればなお一層、小説の醍醐味を存分に楽しめる珠玉の作品集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ままこ
86
サブタイトルの〈大人のアリスと三月兎のお茶会〉に惹かれて手に取った。中島さんらしいシュールで軽妙なパスティーシュ短編集。「Mとマットと幼なじみのトゥー」途中で気づいたけどあの作品が元ネタだったんだ…上手いパロディ化。「親指ひめ」などお伽話系は風刺が効いていた。「国際動物会議」オリジナルは知らなかったけどこの世界観は好き。文豪作品が多く知らなかったのが割とあり知ってればもっと楽しめたのかも。2019/06/10
小夜風
30
【所蔵】いろんな作家の作品に対するオマージュというかパロディというか、遊び心満載な一冊でした。私はどちらかというとカバーとかリメイクとかパロディも、あんまり好きではなく、どうしたってオリジナルに敵う訳はないと思ってしまうのですが、この本は元の作品を殆ど知らなかったこともあってか、とても楽しく読めました。その作品を知らなくてもその作家の作風を知っていれば、あぁ凄い…ぽいわぁ…と驚きました。まるでその文豪たちが中島さんに憑いて書かせたみたいな…今も生きていれば本当に書きそうだと思うくらい、とても感心しました。2019/05/17
amanon
5
図書館にてふと目に留まった題名が気になり手に取る。それが示唆するように、古今東西の名作のパロディー集。すぐに元ネタがわかるものもあれば、清水義範の解説でも言及されている「M~」のように、元ネタをしったら思わず「え~!!」と声をあげて絶句しそうになるくらいの荒唐無稽と言えるレベルで解体と構築をやりとげている作品があるのがみそか。個人的にはその作品を全く読んだことがない岡本かの子の作品をパロディー化した「青海~」がとりわけ印象的だったか。ディストピア的世界と少女の美しい描写が絶妙な対照をなしているのに驚愕。2024/12/31
フリウリ
3
真夜中の電子図書貸出サービス。元ネタも読んでみたい、もう一度読みたいと思わせるのは、作者の思う壺か。「坪内逍遥」による「ゴドーを待たっしゃれ」の翻訳は、いわゆる「現代語」による訳文よりもわかりやすいかも。「ゴドー」の不条理感と、戯作調の日本語の語感やリズムが合うことにびっくりした。初読みの作家さん。おもしろい。82023/01/09
マサ
3
元の話を知らないものも多かったのだが、読み進んでいくうちにそれぞれの話の独特な雰囲気にはまっていく感じ。「夢一夜」は特に。「Mとマットと…」は終盤やっとパロディのネタが分かって2度読み。こういう楽しみもパスティーシュならではかなと。「あとがき」がまた凝っていて、最後まで気が抜けない(?)本でした。2022/10/31