内容説明
江戸の音が聞こえる。光がみえる。
花火で織りなす人生模様。
「祝言は挙げられない」簪職人のおりよは、突然許婚の新之助にそう告げられた。
理由はなんとなく思い当たる。新之助は形がよく、おりよは目が見えないから。
二人で歩いていると耳の後ろが熱くなる。女たちの視線が痛い。どうして私だけこんなことに――。
悔しさを押し殺し、手に残る感覚を頼りに仕事に没頭するおりよだったが……(「闇に咲く」)。
物語の舞台は愛知、山梨、長崎、東京、新潟、そして愛知へ。
のろし、弔い、には意味があるように、花火から生まれる時代小説もある。
音をテーマにした五感に響く物語。
遊女、船問屋、紙問屋、簪職人、花火師、旅籠屋……
市井の人情を掬い取る、珠玉の時代小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ドナルド@灯れ松明の火
23
花火をモチーフにした人情ばなし短編集。志川さんなかなか上手いなぁ。 お薦め2019/09/10
のびすけ
22
花火が織りなす6篇の人間模様。どの物語も含みを残す終わり方の余韻がいい。「闇に咲く」が一番お気に入り。花火の際の事故で視力を失った簪職人のおりよ。不自由ながら懸命に仕事に取り組み、自分自身と向き合うおりよの前向きな姿が心に響いた。あと、「雪の花道」の遊女たちが芸を競う遊女合戦がとても楽しく、雪の中の線香花火が印象的でした。2024/01/24
ごへいもち
13
短編集、半分読んだところで全体的に暗い雰囲気が嫌になって挫折2024/01/22
Y.yamabuki
10
場所も年代も違った六偏からなる短編集。1703年の吉田宿(三河)の旅籠「椿屋」から始まり、1732年の紙漉の市川大門(甲斐)、1776年の丸山遊廓(長崎)と数十年置きの物語が続き、最後が1823年、数代後の「椿屋」。手筒花火だったり、爆竹だったりと各々の土地の花火と供に描かれる。人々は、各々の思いを込めて打ち上げたり、眺めたり。土地の風情を背景に、しっとりと紡がれた良作。2019/09/02
陽ちゃん
6
花火で繋がった江戸時代を舞台にした連作。と言っても、時代も場所も主人公も違いますが、なんとなく繋がっているエピソードが出てきたりして、面白く読み進められました。2019/11/19