穴の町

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穴の町

  • ISBN:9784152098719

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内容説明

郊外の名もなき町々についての作品を執筆中の「ぼく」。とある町に滞在し、誰も乗らないバスの運転手をはじめとする町の住人に取材をする。あるとき、街区に大きな穴が空きはじめ、町は消失し始める……。オーストラリア発・カフカ、安部公房の系譜を継ぐ寄想小説。〈ガーディアン〉誌で「力強く、かつ不穏」と評された物語。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ケイ

129
これは時代と場所を移したカフカの「城」ではないだろうか。失われる街に隠喩されるものは何なのだろうと不思議さを追って読むが、「城」のような重厚感は残念ながら感じられず。人々が集まれば集落はできるが、街となるにはコミュニティサービスが必要となる。巡回バスに乗る人がいなければ、ラジオを聴く人がいなければ、住民登録せずに潜り込んで暮らしたら、街としての機能はどうなるのか·····。そんな街は自壊するのかもしれないと思った。2019/09/16

藤月はな(灯れ松明の火)

85
どこにでもあり、だからこそ、特色が見いだせない店、目立った歴史もないとされ、やる気を失い、鬱屈を抱えながらも変われずに惰性で暮らす住人。そんな静かに寂れつつある町の描写に昔からの店が減りつつある故郷の未来を重ねてしまい、沈んだ気持ちになった。一方でそんな町の事を執筆したい主人公は、町に馴染もうとしつつも町自体はそれを拒否しているよう。それは彼がどこにいても「観察者」という、一種の傲慢な立場を崩さないからだ。主人公に敵意があるスティーヴ・サンダースに殴られる事を矢鱈、勧めるジェニーはそれを見越していたのか。2019/08/21

りつこ

47
全体的に倦怠感が漂ってどんよりした印象。消えゆく町についての本を書いている主人公。訪れた町は特になんという特徴もなくその町の歴史について書かれた本もない。ある日この町に「穴」が現れ、それはどんどん広がっていくのに、なすすべもない町民たち。見ないふりをしたりあえて論点のずれた議論をしたり…。何か重大なことが起きているのに見ないようにしていればそのうちなんとかなる…多分そこまで酷いことにはならないだろうという根拠のない無関心。登場人物はユニークでそれぞれのエピソードは面白いのだが、観念的で理解できなかった。2019/09/11

ヘラジカ

39
とにかく町というものを掘り下げ、その実存をテーマに語りまくる超現実的小説。個性溢れるキャラクターや印象的なエピソードが多数登場するも、全体のトーンは物憂く倦怠感が漂っている。シナリオも雑多と言うほどではないがとっ散らかった印象があり、登場人物との関係性は妙な浮遊感がある。小説としては珍しくサンドボックスを彷彿とさせて非常にユニーク。カフカや安部公房、カルヴィーノの系譜とされているらしいが、確かに訳者の言う通り既視感のない独特な味わいがあるかもしれない。ただ都市を舞台とする後半は理屈的すぎてやや退屈だった。2019/07/06

007 kazu

35
オーストラリアを舞台に消えゆく町を執筆したいという主人公が郊外の町に移り住む。住民は過去に興味を持たず、倦怠感漂う町の日常を主人公視点で描く。 退屈な序盤だが、中盤突如としてその町に穴ができ、しかもだんだんと大きくなる。が、文字通り消えゆく町を出ようとする者はいない。終盤、主人公は町で知り合った女性と都市へ逃げるが。安部公房を思いながら読んでいたがやはり後書きにその名が・・。不条理文学というジャンルか。中盤までは客の入らないパブ、乗客のいないバス、聴者のいないラジオといったギミックや(続く)★32019/11/25

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