内容説明
米相場で破産、没落した家名を再興すべく、松下幸之助は九歳で大阪へ丁稚奉公に出た。事業拡大への飽くなき執念は、妻と始めた家内工業を従業員38万人の一大家電王国へと成長させた。されど、好事魔多し。盟友だった義弟との訣別、GHQの圧力、後継者問題、スキャンダル……。激動の時代を背景に、数々の神話に彩られた「経営の神様」を、新資料と徹底取材で丸裸にした評伝決定版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いちろく
36
ノンフィクションフェア対象の1冊。松下電器産業株式会社を一代で創業から世界的な大企業へと導いた松下幸之助の生涯を描いたノンフィクション。大企業のトップという側面よりも、一個人の特徴にスポットを当てている印象の内容。そのため、人としてのマイナス面も容赦なく描かれており、人間臭さも伝わる。2016/03/20
thee birdmen
18
経営の神様松下幸之助を周りの人たちの証言から再構築していくと、血族の王という名の人間臭さが見えてくる…という評伝。華々しい経営手腕の裏で抱えていた様々な問題が書かれています。頑迷なまでのデジタル嫌いや、愚直さを是として独断を許さない部下への姿勢、後継問題で繰り返した迷走などがその中身。結構辛辣です。それでも販売網全てを家族と捉える経営方針『共存共栄』が東南アジアで今も息づいているという江上氏の解説が改めて幸之助の偉大さを物語っていて、最後うまくバランスを取ったなと思いました。面白かったです。2016/08/13
nishiyan
10
松下電器産業ことパナソニックの創業者・松下幸之助の評伝。あとがきで著者が語っているのだが、パナソニックとPHPの協力を極力仰がなかったから、松下幸之助の光と影を描けたのだろう。興味深かったのは野村吉三郎元海軍大将との関わりである。野村吉三郎の戦後の生き方とリンクするように復権を果たす幸之助。女婿・正治への物足りなさと不満を抱えたまま、一つの遺言を遺すのだが、これがパナソニック迷走の20年を引き起こすのだから、死してもなおその威光は幸之助の光と影を象徴しているように思った。2019/07/05
ふろんた
9
松下電器の成功譚だけでなく、影の部分も。マツダランプと競争するための価格設定手法が印象的だった。2016/06/15
glaciers courtesy
9
これはここだけの話だが、発売後1か月と言うのに大阪や京都の書店にこの「血族の王」の文庫本は僕の知る限り1冊も並んでいなかった。小さな書店は言うに及ばず、梅田の紀伊国屋書店にさえ、発売1か月後の新潮文庫がないのだよ!色々と想像を逞しくしてしまう。ということで、Amzonで購入。帯の裏側には「これを読めば松下幸之助をもっと好きになる」などと書いてあるが、それは表向きの話。成功譚より、負の側面にあえて光を当てたという感じか。しかし、人並み外れて成功した人は多かれ少なかれエキセントリックな人物だとは思うんだよね。2014/05/05