内容説明
日本人のアイデンティティ、本来の気質とは何か。それは、日本の神話である『古事記』が示す「和の国」の姿ではないだろうか。神話と聞くと「非科学的なファンタジー」だと思われる方もいるかもしれない。しかし現代の文化人類学や世界神話学に基づけば神話は人類普遍の理知を秘めていると考えられる。同時に、神話は「民族のアイデンティティを凝結した物語」だと見なすことができる。日本人の場合、『古事記』の記述やその成立過程そのものから、二項対立を避ける民族であることが見出せる。だが現在、民族を象徴する二つの「和の伝統」が失われつつある。現代日本は本当に「和の国」といえるのか、今こそ問い直す。著者の吉木誉絵氏は1986年生まれ、新進気鋭の研究者である。本書ではレヴィ=ストロース氏(文化人類学者)、寺沢薫氏(考古学者)、山本七平氏(思想家)、河合隼雄氏(心理学者)などを手掛かりに考察を深める。解剖学者の養老孟司氏から「日本がどのような国か、本気で考えた一冊」と評された瞠目のデビュー論考。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
62
高校からアメリカで生活することを自ら選んだことで「私は何者か」という問いが生まれ、日本人としてのアイデンティティを日本の神話、「古事記」に求めた。世界神話学によると日本の神話は、ローラシア神話群の特徴を有し日本オリジナルのものはないらしい。古事記では神々は殺し合うことはない。聖徳太子のいう和とは現代の日本にも生きているが、明治以降に個人主義が入ることもあり、むしろ空気となり同調圧力として若者の自己肯定感の低下に関与している。和の国であるためには、天皇の制度・日本語・日本人古来の世界観を守ることが大事。2019/08/29
紫の煙
10
日本を表す言葉として「和」は用いられるが、「和」とは何なのだろうか。十七条憲法の誰でも知っている文言から、何となくイメージするが、それだけなのだろうか。共同体と切り離された戦後の個人主義が、かつての日本の「和」を失わせたに賛成。2020/10/26
えな
9
読み友さんに釣られ。海外留学で感じた自分のidentityを表現する必要性と「神話を壊された民族は滅びる」という思いをきっかけに日本人の考え方の根本は「古事記」に表現されているのではないか、と多数の文献から考察を進める。カミ=「迦微」、奥深く身を隠した存在。自然そのものではなく、自然に宿る不思議な力をかみがみの姿として捉えたのが日本人の神の観念の始まりではないか。大小問わず森羅万象全てのかしこき存在をカミといい、カミに触れた時に心がしみじみと感じ直ちに跪く心が日本人の精神性の本質ではないか、と。2019/11/20
乱読家 護る会支持!
4
鋭い論理性で「よるバズ」等に出演されていた美人保守論客である著者。デビュー作とは思えない読み応えのある、日本人の心が凝縮された本でした。お勧めします。 古事記から我々日本人が大切にしてきた「和」のこころ。戦後の個人主義、権利主義の行き過ぎにより、「和」の大切さが失われつつあります。 「和」の心とは、私心よりも他人や社会を大切にする心の置き方。それが日本という国の特殊性を保ってきたと思います。はたして、これからも守れるのでしょうか? 2019/07/28
チョビ
3
学ばない自分勝手な考えの人が増えたことに対する警告本かな。でも、学ばない人はこういう本は読まない気がー。古事記とそこからみる本来の「和」と今の「空気読み」とはどこかで繋がっているのに、確実に違う。それは違う考えを絶対的に認めない人が増えてて、そこからただ自分に都合のいい考えだけを取り上げ、さらにはその人々に空気を読むことでそれが共通認識と勝手にラベリングした考えない人たちが多くなっているからかな、とは思いました。2019/08/14