内容説明
ネイルサロンで、暑い夏の坂の途中で、深夜の電話口から、人々は不意に怪異を語りだす。奇譚に埋め込まれ、漂っている記憶とは。“時間”・“場所”・“ひと”を重ね合わせる「透視図法」により、そこに眠る深層/心象/真相を掘り起こす。女流作家が綴る、異色のオカルト・ルポ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
nuit@積読消化中
80
初読作家さん。錦ヶ浦や畑トンネルの霊、能取七人連続自殺と白い車、時代箪笥の霊、生霊返しなど盛り沢山の実話系怪談で読み応えがありました。しかし、著者の歴史を絡ませた考察がなんとなく口説く思える部分もしばしば。「七つまでは神のうち」では著者の息子さんが都内で見かける異形の者のお話が、漫画家いがらしみきおさんの『Sink』の異形の者たちを彷彿とし、そんなものが見えると想像したらかなりゾッとしました。また冒頭の学者のお父さんと助手(著者13歳)の奇譚探偵はかなり微笑ましく、これ限りとなると勿体無いネタです。2017/07/20
HANA
65
実話怪談集。読んだ感じでは随筆と地霊を訪ねる旅のような気がした。著者の実話怪談は他と違い独特の立ち位置を保っているのだが、本書ではそれが前面に出た様子。著者らしい独特の怪談は「廃墟半島にて」とか「熊取七人七日目七曲がり」とか土地の過去を探っていく話に顕著に表れているが、随筆風の怪談も「神隠し」「犬の首」等土俗と密接な関係がある話が多く、こちらも酷く面白い。最後に収められている「 鬼婆の子守唄」は事件のルポだが、それが即上質の怪談ともなっている。是非とも著者にはこの方向性で二冊三冊と出してほしいものである。2017/06/01
kazitu
49
オカルトルポ。好きかも。 事実に基づいているから、楽しめた。☺ 岩手県の遠野物語の世界に、私も行ってみたい。 2024/07/15
いたろう
44
これは本当に実話なのか、不思議なできごとをこんなにいろいろ体験しているなんて、できすぎでは? などと野暮は言うまい。地名、場所を実在のものに特定して描く怪異譚は、それが作り話だとしても十分リアリティを感じさせ、十分怖い。怪談、奇譚も、ただのホラー話ではなく、江戸時代の書物から学者の論文まで、引用し、考察を加え、精緻なルポのように構築してみせる手腕は、やはり秀逸。怪談ではないが、冒頭の、中学生の頃に学者である父親が遠野物語の研究旅行に行くのに同行した時の話、「追憶の遠野紀行」が一番読み応えあり。2017/08/02
あたびー
34
中学生の川奈さんと不仲だった大学教授のお父様が遠野を巡る旅から始まる。何となくお二人の姿が浮かぶ素敵な語り。それにしても、これだけ色んな怖い目に会っている実話怪談蒐集者って、川奈さんの他には加門七海さんと郷内心瞳さんくらいなのでは?幼い頃からの色々な経験を「まり子ちゃん」シリーズとしてドラマにしたらいいものが出来そう。川奈さんの体験談以外にも、大阪熊取町の七人怪死に絡めて雨山信仰を紐解いたり、戦後の嬰児大量殺害事件である寿産院事件などを詳しく解題したりと、量質共にどっしりの怪談本なのでした。2022/09/05




