内容説明
ハルラント聖王国の最西端“西ノ庄”の少女エヤアルは幼少のとき、魔法を暴走させて災厄を招き、“炎の鳥”に魔法を奪われた。成長した彼女は労働力として砦に連行されるが、そのとき、あらゆる物事を記憶する力に突如目覚める。彼女の力をめぐって動き出す陰謀と過酷な運命。エヤアルがもたらすのは平和か破滅か……。日本ファンタジーの旗手の新境地。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
有理数
18
うおおおお、素晴らしいファンタジー小説。心に傷を残した過去の出来事が現在に、そして未来に繋がる宿命となる。序盤~中盤、世界観に乗り切れない部分もあったものの、中盤、キシアナを家庭教師として、住み込みで勉学に励む場面からは面白さが格段に上がる。貴族、騎士団、平民、それぞれの想いが交錯する戦争、その真ん中で忽然と輝く主人公・エヤアルの懸命さが眩い。そんな気高き精神の少女の選択が、言葉の魔術によって編まれた流麗なイメージに重なって、感動的なエンディングを紡ぐ。なるほど、乾石智子、素敵な作家です。もっと読みたい。2019/07/28
冬見
13
破滅の力を持って生まれ厄災を招き、魔法の力を奪われた少女エヤアル。成長した彼女は労働力として砦に連行されるが、あらゆる物事を記憶する力に突如目覚め、陰謀に巻き込まれてゆく。◆乾石智子は世界を織り上げる達人である。少女の辿る運命は過酷だが、時に吐き気を催しながらも世界をつぶさに見つめた彼女が織り上げたタペストリーは胸を締め付けられるほど美しく、思わず涙が出た。為政者たちが目指した理想郷よりも、エヤアルが望みを遂げた後の世界の方がが断然「生きてる」って感じがする。だからきっと彼女の選択に間違いはなかったのだ。2021/03/31
ぽてちゅう
10
この物語の世界地図を眺めてください。散在する山脈・湖に大きな島。大小の国々に謎の地名。本文。表現されたものの数だけある色、色、色。実はこれ勧誘魔法。主人公(と私)は最初目に留まった国にいました。魔法を奪われた”空っぽの者”少女エヤアル。魔法を持たないゆえの記憶力、強情、思いやり、しなやかさ、ときめき、そして炎。毛糸玉にして縦糸をかけ横糸を通し、タペストリーに平和を希求する模様を織り込んでいく物語。読み終えると魔法が解けますよ。2019/06/02
Chikara Tonaki
7
少女の成長物語。そこへ人の欲望と日常をそして隣人を愛おしく思う気持ちが織り込まれており、これこそ若い人たちに読んで欲しい本でした。構成にも無駄無く、登場人物も全てストーリーに必要な人々。魔法空間での描写も今回はついて行けたし、乾石さんの作品としてはとても読みやすいと思います。2020/04/28
Satoshi
7
◎普通の女の子が主人公。かつて魔法を持っていたがいまは使えない。家族と羊を相手にした暮らしが好きだが、徴兵されてしまう。帰りたい、戦争は嫌、人を殺したくない、死んでほしくない、本当に普通の女の子。兵士として旅をする中で、火の鳥や賢者と出会い、自らの魔力が封印された意味と記憶の力をもった意味を知る。みんなが平和になる努力をする、まさにそれに力を尽くした女の子の物語。2019/06/05