内容説明
読むことと、書くことと――生涯をこの2つに凝集し、膨大な資料の渉猟と丹念な読み込みから、世に名高い森史学は生まれた。そのかたわら、資料から離れ、虚実の間に筆を遊ばせるかのような本書収載の珠玉の小品が書かれた。『怪談』を愛してやまなかった著者が、「八雲に聴かせたい」との思いで書き綴った怪異談、中国の説話に想を得た作品など、44篇を収める新編集の増補版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
68
前半は江戸、後半は中国の話を集めた怪談集。江戸を舞台とした話のあれこれは本当に滋味溢れるといった表現が似合う話ばかり。猫が不意に喋ったり、提灯の怪異が出たり、亡き人がお別れに来たり、決して派手ではないけれどもどこかほんのり不気味でそれでいて何かしら懐かしいような話ばかりであった。特に「物いう小箱」の後を引く不気味さの余韻といったら…。中国を舞台にした話は人が梯子になったり絵の女が動き出したりと怪異の内容もさることながら、その途中で不意に放り出されるような最後も素敵。しみじみとして懐かしい怪談集でした。2020/08/30
三柴ゆよし
26
おもしろー。晩年はもう江戸時代の随筆と中国の志怪だけ読んどけばいいかなくらいの気になっているのだが、これはとてもよかった。怪談でも奇談でもない、まさしく「雑談」というほかないちょっとおかしな話ばかりをおさめており、こういうお遊びの感覚は、最近の大真面目な文学からは失われてひさしい。もっとたくさん読みたい。2021/08/11
あんみつ
14
新聞書評で知り、絶版のため図書館予約で1年以上待ちましたが、待った甲斐がありました。日本や中国の説話に想を得た小品集。なんとも不思議な話から人情味溢れる話、詐欺に合って「あちゃー」な話があると思えば、おじいちゃんが性悪な若造を懲らしめる胸のすくような話もあってすごく楽しめました。怪談も含まれますが、非常に上品で好みです。「猫が物いう話」はほのぼのした雰囲気に思わず口元が緩むし、「朝顔」は涙がこぼれました。 2014/02/05
blue_elephant
13
日本と中国のショートショート怪談44篇。森銑三氏を初めて知る。本当に知らないことが多い。近世学藝史家というものが、何をされるのかわからない。が、この編纂された作品は、怪異を描かれているが、なんだかほのぼのしてしまう。おばあちゃん家に遊びに行き、布団にもぐりこみながら聞いていた、あの時間を思い出す。幼心に恐くて仕方ないが、おばあちゃんの優しい手に包まれて安心する、仕合わせな時間。でも、やっぱり恐れに慄くことしかできない小さな自分もいたりして。おばあちゃんは、本当に私のおばあちゃんだったのかしら。2020/11/17
ぱせり
7
深い森の匂いがしてくるような、水の流れる音が聞こえてくるような。涼やかな湿めりけを感じる。そこはかとないユーモアも。一篇一篇が、上質の小品だと思う。好きなのは、『気の抜けた話』(朝餉の夫婦に幸いあれ)、『弟子』の最後のの数行の美しさが心に残る。2022/06/21
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